この記事の要点
- 施設賠償責任保険は、マンションの欠陥や管理不備によって第三者へ与えた損害の賠償に備える保険
- 外壁材の落下や共用階段での転倒は対象になり得ますが、建物自体の修理費は原則として対象外
- 漏水や工事中の事故などは補償されない場合があるため、加入前に特約と免責事項の確認が必要
マンションを所有していると、建物の不具合や管理上の不備によって、入居者や通行人にけがをさせたり、他人の物を壊したりする可能性があります。
こうした事故でオーナーが法律上の損害賠償責任を負った場合に備えるのが、施設賠償責任保険です。
火災保険とは補償する対象が異なるため、「火災保険に入っていれば十分」とは限りません。
特に一棟マンションでは、外壁や屋根、階段、廊下、給排水設備など、オーナーが管理する範囲が広くなります。
この記事では、一棟マンションの賃貸オーナーを主な対象として、施設賠償責任保険の補償範囲や事故例、対象外となる損害、加入前の確認事項を解説します。
マンションオーナー向けの施設賠償責任保険とは

施設賠償責任保険は、マンションの構造上の欠陥や安全管理の不備が原因で第三者に損害を与え、オーナーが法律上の賠償責任を負った場合に備える保険です。
マンション内で事故が起きただけで、必ず保険金が支払われるわけではありません。
建物の欠陥や管理不備と事故との関係、オーナーに法律上の賠償責任があるか、契約上の補償条件を満たすかなどをもとに判断されます。
建物オーナーが賠償責任を問われる理由
民法717条では、土地の工作物の設置・保存に問題があり、他人へ損害を与えた場合の責任について、次のように定めています。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
マンションも「土地の工作物」に該当します。
例えば、外壁材が剥がれかけているのに補修しなかった場合や、壊れた手すりを放置していた場合は、事故の原因や管理状況に応じて責任を問われる可能性があります。
火災保険との違い
火災保険と施設賠償責任保険では、主に補償する損害が異なります。
| 比較項目 | 火災保険 | 施設賠償責任保険 |
|---|---|---|
| 主な補償対象 | オーナーが所有する建物 | 第三者への対人・対物賠償 |
| 事故例 | 火災や風災による建物の破損 | 外壁材の落下による通行人のけが |
| 建物自体の修理 | 対象になる場合がある | 原則として対象外 |
例えば、強風で外壁材が壊れた場合、外壁の修理費は火災保険の対象になる可能性があります。
一方、その外壁材が落下して通行人にけがをさせ、オーナーが賠償責任を負った場合は、施設賠償責任保険の対象となる可能性があります。
施設賠償責任保険が適用される主な事故例

マンションでは、建物の老朽化や設備の不具合、清掃・点検の不足などによって事故が発生することがあります。
施設賠償責任保険の対象になり得る代表的な事故を確認しましょう。
外壁材が落下して通行人にけがをさせた
外壁タイルや屋根材などが落下し、通行人にけがをさせたり、駐車中の車を傷つけたりするケースです。
ひび割れや浮きなどの異常を把握しながら、必要な点検・補修を行っていなかった場合は、オーナーの管理責任が問われる可能性があります。
事故への備えとともに、定期的な点検と早めの補修を行うことが重要です。
共用階段や廊下で入居者が転倒した
階段の手すりが外れた、廊下の床が破損していた、照明の故障で足元が見えにくかったなどの理由で、入居者や来訪者が転倒するケースです。
清掃後の濡れた床に注意表示がなく、転倒事故が発生することも考えられます。
ただし、共用部分で転倒したという事実だけでは補償の可否は決まりません。
設備の状態や管理状況、事故との因果関係が確認されます。
給排水設備の不具合で水濡れ損害を与えた
共用の給排水管が破損し、入居者の家財や隣接する建物を濡らす場合があります。
ただし、東京海上日動火災保険は、保険金を支払えない主な場合として、次の損害を挙げています。
給排水管、暖冷房装置等からの蒸気・水やスプリンクラーからの内容物の漏出・いっ出
上記の損害は、特約をセットすることで補償対象にできる場合があります。
マンションでは漏水が起こり得るため、基本補償だけで対応できるか確認しておきましょう。
損害賠償金以外の費用が発生した
契約内容によっては、被害者へ支払う損害賠償料だけでなく、訴訟費用や弁護士費用、被害拡大を防ぐための費用、緊急措置費用なども補償されます。
費用によっては、支出前に保険会社の同意が必要です。
事故が発生したときは独断で示談や修理を進めず、速やかに保険会社または代理店へ連絡しましょう。
施設賠償責任保険で補償されない主なケース

施設賠償責任保険へ加入しても、マンションに関するすべての事故や損害が補償されるわけではありません。
対象外となる主なケースを把握し、必要に応じて火災保険や特約などで備えましょう。
マンション自体の修理費用
施設賠償責任保険は、第三者への賠償責任に備える保険です。
事故原因となった外壁や給排水管など、オーナーが所有する建物自体の修理費は原則として対象になりません。
建物の損害は火災保険などで補償される可能性がありますが、経年劣化による修理は対象外となる場合があります。
自然災害や工事中に起きた事故
地震、噴火、津波、洪水、高潮などに起因する損害は、一般的な施設賠償責任保険では対象外となります。
マンションの新築、修理、改造、取り壊しなどの工事中に発生した事故も、別の保険が必要になる場合があります。
修繕工事を発注するときは、施工業者の保険加入状況と、発注者側の補償範囲を確認してください。
故意や特別な契約によって生じた損害
契約者や被保険者が故意に起こした事故は、原則として補償されません。
他人との特別な契約によって通常より重くなった賠償責任や、被保険者が管理している物の損壊なども対象外になる場合があります。
区分マンションオーナーは管理組合の保険を確認する

区分マンションでは、一棟マンションと異なり、共用部分と専有部分で管理する主体が分かれます。
エントランス、廊下、階段、外壁などの共用部分は、一般的に管理組合が加入するマンション総合保険などで備えます。
ただし、施設賠償責任補償が付帯されているとは限りません。
室内設備などの専有部分については、区分オーナー自身が加入する火災保険や賠償責任特約で備える必要があります。
共用部分と専有部分の境界は管理規約によって異なることがあるため、管理規約と保険証券を確認しましょう。
マンションオーナーが加入前に確認したいポイント

施設賠償責任保険を選ぶときは、所有するマンションの管理範囲と事故リスクに合った補償になっているかを確認します。
主な確認項目は、以下のとおりです。
- 駐車場や駐輪場、物置などの付属施設も対象か
- 給排水設備による漏水を補償する特約があるか
- エレベーター事故を補償できるか
- 1事故あたりと保険期間中の支払限度額はいくらか
- 事故時にオーナーが負担する免責金額はいくらか
- 複数棟を所有している場合、すべての建物が対象か
- 火災保険の特約と補償が重複していないか
保険期間は商品によって異なります。
契約更新時には、所有物件の追加や設備の変更、修繕履歴などを整理し、現在の状況と補償内容にずれがないか見直しましょう。
よくある質問(FAQ)

マンションオーナーは施設賠償責任保険へ必ず加入する必要がありますか?
しかし、一棟マンションでは、外壁や廊下、階段など広い範囲をオーナーが管理します。
建物の設置・保存に問題があると、民法717条に基づく責任を問われる可能性があるため、加入を検討しましょう。
火災保険に入っていれば施設賠償責任保険は不要ですか?
火災保険に施設賠償責任特約が付いているか、保険証券で確認してください。
付帯されている場合も、対象施設や支払限度額、免責金額がマンションのリスクに合っているか確認が必要です。
給排水管からの水漏れは補償されますか?
特約を付けることで補償できる場合もありますが、被害者への賠償、原因調査、破損した配管の修理では扱いが異なります。
加入時にそれぞれの補償範囲を確認してください。
施設賠償責任保険はマンションの事故リスクに合わせて選ぼう

一棟マンションのオーナーは、外壁や廊下、階段、給排水設備など、建物全体の所有・管理に伴う事故リスクを抱えています。
施設賠償責任保険に加入すれば、管理不備などによって第三者へ損害を与え、法律上の賠償責任を負った場合に備えられます。
しかし、建物自体の修理費や自然災害、漏水などは補償されないことがあります。
火災保険に付帯されている特約を確認し、対象施設、漏水補償、支払限度額、免責事項に不足がないか整理しましょう。
区分マンションオーナーは、管理組合の保険と自身の保険の補償範囲を分けて確認することが重要です。


