この記事の要点
- 理事に報酬を支払う管理組合は約2割で、全体の7割は無報酬のまま運営されている
- 相場は一律支給で月額3,900円前後、役職別なら理事長で月9,500円ほどが目安になる
- 報酬制度の導入には総会の特別決議が必要で、実費弁償とは別に管理規約で定める
輪番で理事や理事長を任され、「これだけ手間がかかるのに報酬は出ないの?」と感じていませんか。
総会の準備や住民対応、管理会社とのやり取りまで、理事の仕事は思った以上に幅広く及びます。無償のボランティアで担うのが当たり前とされてきましたが、負担の重さから引き受けたくないという声も増えています。
理事報酬には相場があり、金額の決め方や導入の手順にも一定のルールがあります。仕組みを知っておけば、制度を提案するときも辞退を考えるときも、落ち着いて判断できます。
本記事では、理事報酬の実態と相場、メリットとデメリット、導入手順、そして引き受けたくないときの選択肢までを、公的調査のデータをもとに整理しました。
読み終えるころには、自分の組合に合った報酬の考え方が見えてくるでしょう。
マンション管理組合の理事に報酬はある?支払いの実態

理事報酬とは、管理組合の理事や監事が役員としての活動に対して受け取るお金のことです。
支払うかどうかは組合ごとの判断にゆだねられており、実際に報酬を出す組合は少数派です。
まずは全国的な実態から確認します。
報酬を支払う組合は約2割にとどまる
理事に報酬を支払う管理組合は、全体の2割強にとどまります。
国土交通省の平成30年度マンション総合調査では、役員全員に報酬を支払う組合は23.1%でした。役員報酬に関する最新の全国データは、この平成30年度調査によるものです。
裏を返せば、7割以上の組合には金銭的な見返りがありません。理事の仕事が「住民同士の助け合い」として担われてきた背景がうかがえます。
参照:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果〔概要編〕」
報酬は管理規約で定めるのが原則
理事報酬を支払うには、管理規約にその根拠を書いておく必要があります。
国土交通省が公表する標準管理規約の第37条では、役員は活動に応じた必要経費の支払いと報酬を受けられると定めています。規約に定めがないまま報酬を出すと、あとから支出の正当性を問われかねません。
金額そのものは規約本体ではなく、別に定める細則に委ねる形が一般的です。柔軟に見直せるよう、二段構えにする組合が多く見られます。
マンション管理の理事報酬の相場はいくら?役職別の目安

理事報酬の相場は、一律支給なら月額数千円、役職別なら理事長で月1万円弱が目安です。
金額はマンションの規模や業務量によって幅があります。
調査データをもとに、決め方ごとの相場を見ていきます。
一律支給なら月額3,900円が平均
国土交通省の平成30年度マンション総合調査では、一律支給の平均は月3,900円でした。
月1,000円前後の少額にとどまる組合も目立ち、数万円という高額な設定はまれです。あくまで手間へのささやかな謝礼という位置づけが中心です。
金額の小ささから、報酬を出しても担い手が増えるとは限らないという指摘もあります。それでも無償ではないという事実が、引き受けやすさにつながる面はあります。
役職別では理事長が月9,500円前後
役職ごとに金額を変える場合、理事長の報酬がもっとも高く設定されます。
同じ平成30年度の調査による役職別の月額目安は、次のとおりです。
| 役職 | 月額報酬の目安 |
| 理事長 | 9,500円前後 |
| 一般理事 | 3,900円前後 |
| 監事 | 3,200円前後 |
同じマンションでも、規模や財政状況によって水準は上下します。相場は出発点として捉え、自分たちの組合に合う額を話し合うことが大切です。
参照:横浜マンション管理・FP研究室「管理組合の役員報酬はどう決める?相場・決め方・トラブルを防ぐ基準を解説」
理事報酬を設定するメリットとデメリット

理事報酬には、なり手不足をやわらげる効果と、管理費への負担という課題の両面があります。
導入するかどうかは、両面を比べて判断することが欠かせません。主な利点と注意点を整理します。
メリットはなり手不足の緩和
報酬を設けるメリットは、理事のなり手を確保しやすくなる点です。
無償だと損な役回りと感じて敬遠されがちですが、報酬があれば引き受けへの心理的なハードルが下がります。報酬制度に期待できる効果は、次のとおりです。
- 役員を引き受ける動機づけになる
- 活動への責任感やモチベーションが高まる
- 一部の住民だけが負担する不公平感をやわらげる
金銭で貢献に報いる姿勢が、組合運営を前向きにする後押しになります。
デメリットは管理費への上乗せと実費弁償との混同
報酬の支払いは、管理費や修繕積立金を圧迫する要因になります。
役員報酬の原資は住民が負担する管理費です。金額次第では、将来の修繕に回すお金が削られることになりかねません。
さらに注意したいのが、交通費などの実費弁償と報酬を混同しないことです。両者を一緒にすると税務や会計の処理があいまいになるため、規程のうえで明確に分けて扱いましょう。
マンション管理で理事報酬制度を導入する手順

理事報酬を導入するには、理事会での検討から総会の決議、規程の整備までの手順を踏みます。
思いつきで支払いを始めず、正式な手続きを経ることが後々のトラブルを防ぎます。流れは次のとおりです。
- 理事会で必要性と財源を検討する
- 総会の特別決議で規約を改正し、報酬規程を整える
理事会で必要性と財源を検討する
最初のステップは、理事会で報酬制度の必要性を話し合うことです。
なり手不足が深刻なのか、財源となる管理費に余裕があるのかを確認します。相場と自分たちの組合の規模を照らし合わせ、無理のない金額の方向性を固めておくとよいでしょう。
この段階で組合員に情報を共有し、意見を聞いておくとスムーズです。総会でいきなり提案するより、合意が得やすくなります。
総会の特別決議で規約を改正し規定を整える
報酬の根拠を作るには、総会で管理規約を改正します。
規約の変更は重要な決定にあたるため、区分所有者と議決権のそれぞれ4分の3以上の賛成が必要です。改正の趣旨や金額の根拠を資料にまとめ、疑問に答えられるよう準備しておきましょう。
規約を改正したあとは、役職ごとの額や支払方法を役員報酬規程として書面にまとめます。細則にしておくと、将来の見直しを簡単な手続きで行える利点もあります。
マンション管理の理事を引き受けたくないときの選択肢

理事は正当な理由があれば辞退でき、代わりに協力金を求められる組合もあります。
報酬があっても引き受けが難しい事情は誰にでもあります。辞退の可否と、その場合の選択肢を確認しておきましょう。
正当な理由があれば辞退でき協力金がかかる例もある
理事の就任は、やむを得ない事情があれば辞退が認められる場合があります。
仕事の多忙や健康上の問題、高齢、幼い子どもの世話などが理由にあたります。多くの組合では、こうした事情を考慮して免除や交代の運用を設けています。
ただし、辞退する人に協力金の負担を求める組合もあります。過去には、住まいを外部に貸す不在の区分所有者へ月額2,500円の負担を求めた規約変更について、平成22年1月26日の最高裁判決が有効と認めました。
第三者管理という選択肢
住民が理事を担い続けるのが難しい場合、第三者管理という方法もあります。
第三者管理とは、マンション管理士や管理会社などの専門家が理事長の役割を代行する仕組みです。住民の負担を大きく減らせますが、外部への委託費用がかかります。
高齢化で担い手が確保できない組合を中心に、選ぶ動きが広がっています。費用と負担軽減のバランスを見て、総会で検討するとよいでしょう。
よくある質問
理事報酬の相場はいくらですか?
報酬をもらうと確定申告は必要ですか?
理事報酬は管理規約がなくても払えますか?
理事はどうしても断れないのでしょうか?
まとめ|理事報酬は仕組みを知って自分の組合に合う形を選ぶ

理事に報酬を支払う組合は約2割で、相場は一律支給なら月額3,900円前後、理事長では月9,500円ほどが目安です。導入には総会の特別決議が必要で、実費弁償とは切り分けて考える点も欠かせません。
まずは、自分のマンションの管理規約に報酬や協力金の定めがあるかを確認してみましょう。そのうえで、なり手不足や財政の状況を理事会で共有すれば、制度を提案するときも辞退を考えるときも話し合いの土台ができます。
仕組みを理解しておけば、無償の負担に悩むのではなく、納得して理事の役割と向き合えます。


