この記事の要点
- 築古物件で利益を出すオーナーは、購入前の判断精度と運営設計の精度が高いのが共通点
- 修繕・空室対策・入居者目線・数字管理という「基本の徹底」で収益を安定させている
- 失敗するケースは感覚的な判断や短期目線に偏り、リスク管理が甘くなる傾向がある
築古物件(一般的に築20年以上、特に法定耐用年数を超えた木造22年・鉄骨34年・RC47年以降の物件)は、取得価格の安さから新築よりも高い表面利回りを期待できる一方で、運営の巧拙によって最終的な収益性が大きく変わる投資対象です。
新築や築浅と比べて修繕リスク・空室リスクが高く、安定した収益を得るには明確な戦略が欠かせません。同じように築古物件を所有していても、毎年安定してキャッシュフローを残すオーナーと、気づけば赤字が慢性化しているオーナーには、はっきりとした「視点の違い」があります。
本記事では、築古物件で成功しているオーナーに共通する5つの視点と、失敗を招く典型的な考え方を、具体的な費用感・数字とともに整理します。これから築古投資を検討している方も、すでに所有していて収益改善に悩んでいる方も、自身の運営を見直すチェックリストとしてご活用ください。
そもそも「築古物件」とは?定義とメリット・デメリット
築古物件には法律上の明確な定義はありませんが、不動産投資の実務上は築20年以上、あるいは法定耐用年数を超えた物件を指すことが一般的です。構造別の法定耐用年数は以下のとおりです。
| 構造 | 法定耐用年数 | 築古とされる目安 |
|---|---|---|
| 木造 | 22年 | 築20年以上 |
| 軽量鉄骨造 | 19〜27年 | 築20年以上 |
| 重量鉄骨造 | 34年 | 築25年以上 |
| RC(鉄筋コンクリート)造 | 47年 | 築30年以上 |
築古物件のメリット
- 取得価格が安い:同じエリア・規模でも新築の3〜5割程度で取得できるケースがある
- 表面利回りが高い:地方の築古一棟なら15〜20%超の物件も存在する(新築は5〜8%が中心)
- 減価償却を短期間で計上できる:耐用年数超過物件は最短4年(木造)で償却でき、節税メリットが大きい
- 運営の工夫で収益改善の余地が大きい:リフォームや管理改善で価値を上げやすい
築古物件のデメリット
- 修繕費がかさみやすい:屋根・外壁・給排水管など大規模修繕が発生しやすい
- 金融機関の融資が付きにくい:法定耐用年数超過物件は融資期間が短く、自己資金が多く必要
- 空室リスクが高い:設備の古さや競争力低下で募集に苦戦しやすい
- 出口(売却)が難しい場合がある:買い手の融資が付きにくく流動性が低い
このように築古物件は「高利回り・高節税」と「高リスク・低流動性」が表裏一体です。だからこそ、運営力のあるオーナーとそうでないオーナーで結果が大きく分かれます。ここからは、利益を出し続けるオーナーに共通する5つの視点を解説します。
「購入前」に勝負の8割を決めている

利益を出しているオーナーほど、購入前の段階に最も多くの時間をかけています。築古物件は購入後の改善余地がある一方で、立地・建物構造・周辺需要といった「購入後には変えられない要素」が収益を大きく左右するからです。
表面利回りではなく「実質利回り」で判断する
初心者が陥りがちなのが、表面利回り(年間家賃収入 ÷ 物件価格)だけで判断してしまうことです。成功するオーナーは、必ず実質利回り(NOI利回り)で収益性を見極めます。
| 項目 | 計算式 | 具体例(物件価格2,000万円) |
|---|---|---|
| 表面利回り | 年間家賃収入 ÷ 物件価格 | 240万円 ÷ 2,000万円=12% |
| 実質利回り | (年間家賃収入−年間経費) ÷ (物件価格+取得諸費用) | (240万−60万) ÷ (2,000万+150万)=約8.4% |
築古物件では、固定資産税・管理費・修繕費・空室損などの経費が新築より重くなりがちです。表面利回り12%でも、実質では8%前後まで下がることは珍しくありません。さらに融資の元利返済を加味したキャッシュフローまで試算して初めて、本当に手元に残るお金が見えてきます。
「時間軸のリスク」を意識している
特に重要なのは、購入後にコントロール不能なリスクがどれだけ残るかという視点です。築年数が古くても、賃貸需要が安定しているエリア(駅徒歩10分以内、大学・工場・病院などの需要源がある立地)であれば長期保有が可能です。一方、人口減少が続くエリアでは、時間の経過とともに空室リスクが増加します。
成功するオーナーは、購入前に必ず以下を確認しています。
- エリアの人口動態(国勢調査・自治体の将来推計人口)
- 周辺の家賃相場と空室率(SUUMO・ホームズの掲載状況、賃貸需給)
- 給排水管・屋根・外壁の劣化状況(インスペクションの活用)
- 再建築可否・接道状況(出口戦略に直結)
修繕を「コスト」ではなく「投資」として捉えている

築古物件では、修繕やリフォームは避けて通れません。成功しているオーナーは、この支出を単なるコストではなく、収益改善のための投資として捉えています。
費用対効果の高い修繕に集中する
重要なのは「全部やる」のではなく、「効果が出る部分に集中する」という考え方です。限られた予算の中で、どこに投資すれば最も空室期間を短縮し、賃料を維持・向上できるかを見極めます。代表的なリフォームの費用感と効果は以下のとおりです。
| リフォーム内容 | 費用目安(1室) | 費用対効果 |
|---|---|---|
| クロス(壁紙)張り替え | 4〜8万円 | ◎ 第一印象を大きく改善 |
| クッションフロア・床張り替え | 3〜10万円 | ◎ 清潔感アップ |
| ハウスクリーニング | 2〜5万円 | ◎ 低コストで効果大 |
| キッチン・洗面の設備交換 | 10〜30万円 | ○ 水回りは内見時の決め手 |
| 独立洗面台・温水洗浄便座設置 | 5〜15万円 | ○ 競争力向上に直結 |
| 無料インターネット導入 | 初期5〜20万円+月額 | ○ 入居決定率が上がりやすい |
| デザイン性重視の高級内装 | 50万円〜 | △ 回収が難しいケースも |
例えば、クロス張り替えとハウスクリーニングで合計10万円程度の投資により、空室期間を2か月短縮できれば、家賃6万円の物件なら12万円分の機会損失を防げます。「いくらかけて、家賃やいくらの機会損失を回収できるか」という投資判断ができるかどうかが、成功と失敗を分けます。
入居者目線の「最低限の競争力」を理解している

築古物件は新築と同じ戦い方では勝てません。そのため成功しているオーナーは、「どこで勝負するか」を明確にしています。すべてを最新設備にするのではなく、入居者が実際に重視するポイントに絞って改善を行っています。
築年数に関係なく重視される要素
各種入居者アンケートで上位に挙がる「築年数に関係なく重視される要素」は以下のとおりです。これらは比較的少ない投資でも満足度を大きく上げられる、費用対効果の高い項目です。
- 清潔感:内見時の印象を決定づける最重要要素
- 臭いのなさ:タバコ・カビ臭は即敬遠される
- 水回りの使いやすさ・清潔さ:キッチン・浴室・トイレ
- インターネット環境:無料Wi-Fiは特に若年層・単身者に人気
- 収納の充実・セキュリティ(オートロック・モニター付インターホン)
一方で、デザイン性だけを重視した改修や、生活に直結しない部分への過剰投資は回収が難しいケースが多くなります。成功しているオーナーは競合物件との比較を常に意識し、「この家賃帯なら最低限ここまでは必要」という基準を持っています。この基準があることで、過剰投資と機会損失の両方を防げるのです。
空室対策を「事後対応」ではなく「事前設計」にしている

空室が発生してから対策を考えるのではなく、常に空室を前提に運営設計をしている点も成功するオーナーの特徴です。退去予測を踏まえた募集準備、賃料の柔軟な調整、仲介会社との関係構築などを日常的に行っています。
「初動スピード」が収益を左右する
特に重要なのは、募集開始時の初動スピードです。築古物件は空室期間が長引くほど印象が悪化しやすく、結果的に賃料を下げざるを得ない状況に陥ります。空室1か月の損失は、家賃6万円なら6万円。これが半年続けば36万円の機会損失です。
実践している事前設計の例
- 退去連絡の段階で募集準備を開始:原状回復の見積もりと募集条件をすぐ決める
- 複数の仲介会社へ同時に依頼:客付け力のある会社を見極める
- 募集写真・室内写真を充実させる:ポータルサイトでの反響率が変わる
- フリーレント・初期費用軽減などの条件を準備:賃料を下げずに決める工夫
- 仲介手数料(AD)の設定:競合が多いエリアでは家賃1〜2か月分のADで優先紹介を狙う
退去前から次の入居者を意識した準備をしているかどうかで、年間の収益安定性は大きく変わります。
数字管理がシンプルで継続している

成功しているオーナーは、複雑な分析ツールを使うよりも、基本的な数字を継続して管理することを重視しています。具体的には次のような項目です。
- 表面利回り・実質利回り:購入時の想定と現状のズレを把握する
- キャッシュフロー(手残り):家賃収入からローン返済・経費・税金を引いた実額
- 空室率・稼働率:年間を通じてどれだけ稼働しているか
- 修繕費の累計と予測:突発的な出費に備える積立額の把握
これらをExcelやスプレッドシートで毎月更新するだけでも、収益の変化に早く気づけます。失敗するオーナーは「なんとなく黒字だと思っていた」状態のまま運営を続け、気づいたときには赤字が積み重なっているケースが少なくありません。
「実質利回り」で判断する習慣
築古物件で特に注意したいのは、表面利回りの高さに惑わされないことです。表面利回り15%の物件でも、修繕費や管理費、税金を差し引くと実質利回りが7〜8%まで下がることは珍しくありません。成功するオーナーは購入前から実質利回りベースで判断し、運営中も常に実数値を追っています。
出口戦略を持っている
築古物件で長期的に利益を出すオーナーは、購入の時点で「いつ・どのように手放すか」という出口戦略を描いています。築古物件は建物の価値が下がりにくい一方で、土地値が残るケースも多く、出口の選択肢が複数あるのが特徴です。
- 満室稼働させて収益物件として売却:利回りを評価してもらいやすい
- 更地にして土地として売却:建物の老朽化が進んだ場合の選択肢
- 保有を続けてキャッシュフローを得る:ローン完済後は手残りが大幅に増える
出口を意識せずに購入すると、売却しづらい物件をいつまでも抱え込むことになりかねません。「買って終わり」ではなく「売るところまで設計する」のが、利益を出し続けるオーナーの共通点です。
成功と失敗を分ける視点のまとめ表
| 視点 | 成功するオーナー | 失敗するオーナー |
|---|---|---|
| 購入判断 | 実質利回りで判断 | 表面利回りに惑わされる |
| 修繕 | 計画的に積立・実施 | 場当たり的に対応 |
| 空室対策 | 退去前から準備 | 空室発生後に動く |
| 数字管理 | 毎月継続して把握 | 感覚で運営 |
| 出口 | 購入時から設計 | 無計画に保有 |
よくある質問(FAQ)
築古物件は初心者でも利益を出せますか?
結論から言えば、初心者でも利益を出すことは可能です。ただし、表面利回りの高さだけで飛びつくのは危険です。築古物件は修繕費がかさみやすく、想定外の出費が発生しやすいため、購入前に建物の状態を入念にチェックし、実質利回りで判断することが欠かせません。まずは小規模な物件から始め、運営の経験を積みながら徐々に規模を広げていくのが安全な進め方です。
築古物件の修繕費はどのくらい見込めばよいですか?
物件の規模や状態によって異なりますが、目安として家賃収入の10〜15%程度を修繕積立として確保しておくと安心です。築古物件は給排水管・屋根・外壁など大型の修繕が突発的に発生しやすいため、毎月の積立に加えて、購入時にあらかじめ100万〜数百万円規模の修繕予算を見込んでおくケースもあります。インスペクション(建物状況調査)を実施して、購入前に修繕の優先度を把握しておくことを強くおすすめします。
空室が長引いたときはどう対処すればよいですか?
まずは**募集条件と物件の魅力を客観的に見直すことが第一歩です。賃料が周辺相場より高くないか、募集写真は充実しているか、仲介会社へのADは適正かを確認しましょう。それでも決まらない場合は、フリーレントの導入や初期費用の軽減、簡易リフォームによる印象改善が効果的です。空室は放置するほど機会損失が膨らむため、早めに複数の手を打つことが重要です。
築古物件と新築物件、どちらが利益を出しやすいですか?
どちらが優れているという単純な比較はできませんが、築古物件は高利回りを狙いやすい反面、運営の手間とリスク管理が必要**です。新築は手間が少なく安定しやすい一方で、利回りは低めになります。築古物件で利益を出せるかどうかは、本記事で紹介した「数字管理」「修繕計画」「空室対策」「出口戦略」をきちんと実践できるかにかかっています。手間をかけてでも高い利回りを取りに行きたい人には、築古物件は魅力的な選択肢です。
まとめ
築古物件で利益を出し続けるオーナーには、明確な共通点があります。それは、購入前から実質利回りで冷静に判断し、計画的に修繕を行い、空室を前提とした運営設計をして、数字を継続的に管理し、出口まで見据えているという点です。
逆に失敗するオーナーは、表面利回りの高さに惑わされ、場当たり的に修繕や空室対策を行い、感覚で運営を続けてしまいます。築古物件は決して「安く買えば儲かる」という単純なものではありません。運営の質こそが収益を左右するのです。
これから築古物件への投資を検討している方は、まず本記事で紹介した5つの視点を自分の運営に取り入れられるかを確認してみてください。一つひとつは特別なことではなく、地道に継続することで着実に成果につながる習慣ばかりです。「買って終わり」ではなく「育てて利益を出す」という意識を持つことが、成功するオーナーへの第一歩となるでしょう。


