この記事の要点
- 全戸一括型は管理組合がまとめて回線を契約する方式で、住民は個別の申込みや開通工事なしでネットを使える
- 電話線を使うVDSL方式は速度の上限が100Mbpsで、光配線方式に切り替えると1Gbpsまで引き上げられる
- 既存の配管を使う光ファイバー工事は、規約の変更なしに総会の普通決議で実施できるとされている
「夜になるとネットが遅いって、住民から苦情が来ているんだけど…」
「インターネットを一括導入するなら、理事会は何を決めて、住民にどう説明すればいいの?」
築年数の古いマンションでは、電話線を使う古い配線のまま、住民の不満が理事会に届くことも少なくありません。テレワークや動画視聴が当たり前になり、回線速度は住民の暮らしやすさや住戸の評価に影響します。理事として何から手をつければよいか、迷う方も多いでしょう。
配線方式と費用負担の考え方を押さえれば、一括導入は理事会が主導して無理なく進められる取り組みです。工事の内容によっては、規約を変えずに総会の普通決議で実施を決められるケースもあるでしょう。
本記事では、一括導入のメリットと注意点に加え、総会決議の要件や住民へ案内する手順を紹介します。
費用と効果を住民に説明する材料がそろい、総会の準備も進めやすくなるでしょう。
マンション管理でインターネットを一括導入するとは

インターネットの一括導入とは、管理組合が1つの事業者と契約し、全戸に同じ回線を引く仕組みのことです。
全戸一括型と個別契約の違い
全戸一括型は、契約者が管理組合で、利用料を管理費などと一緒に全戸から集める方式です。個別契約では、各住戸が自分で事業者を選んで申し込みます。
両者の違いを次の表にまとめました。
| 項目 | 全戸一括型 | 個別契約 |
| 契約者 | 管理組合 | 各住戸 |
| 費用の負担 | 全戸が同じ額 | 使う住戸だけ |
| 申込みと工事 | 入居時は不要 | 住戸ごとに必要 |
| 事業者の選択 | 総会で1社に決める | 住戸ごとに自由 |
事業者を自由に選べない点は、住民に事前に説明しておきましょう。
速度は配線方式で決まる
配線方式とは、建物の共用部から各住戸まで回線を届ける配線の種類のことです。光ファイバーを使う光配線方式のほか、電話線のVDSL方式とLANケーブルのLAN配線方式があります。
NTT東日本のフレッツ光ネクストは、上り下りの上限が1Gbpsのサービスです。VDSL方式とLAN配線方式では、速度の上限が100Mbpsまで下がります。
参照:INTERNETWatch「NTT東日本、集合住宅の入居者向けに光配線化リクエスト受付窓口を設置、VDSL/LAN配線方式からの移行を推進」
マンションのインターネット一括導入のメリット

一括導入の主なメリットは、住民の通信費と手間が減り、賃貸に出している住戸が借り手に選ばれやすくなる点にあります。
全戸一括型の利用料とは、契約料金を全戸で分けて負担する費用のことです。
住民の通信費と手続きが減る
全戸でまとめて契約するため、1戸あたりの利用料が個別契約より安く設定される場合があります。住民は回線の申込みや開通工事の立ち会いをせずに済むのも利点です。
高齢の住民にとっても、機器の設定や事業者とのやり取りが減るでしょう。
賃貸に出している住戸が選ばれやすい
NTT東日本のコラムによると、単身者向けの人気設備では2015年から10年続けて「インターネット無料」が1位でした。2025年10月20日号では、「高速インターネット(1Gbps以上)無料」が初めて1位になっています。
無料であることより、速さが求められるようになった変化です。VDSL方式の上限100Mbpsのままでは、住戸を貸す区分所有者にとって不利になりかねません。
参照:NTT東日本「「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まる」単身者向けランキング1位に「高速インターネット」」
一括導入で気をつけたいデメリット

一括導入のデメリットは、費用と契約期間、速度の3点です。
- 費用:回線を使わない住戸も同じ額を負担する
- 契約期間:長期契約が多く途中で解約しにくい
- 速度:利用が集中する夜に遅くなりやすい
3点とも、契約前に事業者へ確認すれば対策を立てられます。
使わない住戸も費用を負担する
全戸一括型では、個別に光回線を契約している住戸やネットを使わない世帯も同じ利用料を払います。不公平だと感じる住民が出やすく、総会で反対票が増える原因になる部分です。
個別契約の残り期間がある住戸には、切り替え時期や違約金の扱いを事業者と相談しておきましょう。
長期契約が多く途中で解約しにくい
最低利用期間とは、期間内に解約すると違約金がかかる契約上の期間のことです。事業者によっては工事費を利用料で回収するため、長期の契約になる場合があります。
契約書では、期間の長さと違約金の計算方法、満了後の更新条件を確かめてみましょう。
利用が集中する夜に遅くなりやすい
全戸一括型は、建物まで届く回線を全戸で分け合って使います。夜の時間帯に多くの住戸が動画を見ると、1戸あたりの速度が落ちやすくなる仕組みです。
事業者を選ぶ際は、建物まで引き込む回線の容量と、各住戸までの配線方式を聞いておきましょう。
インターネット一括導入に必要な総会決議

既存の配管を使うなど形を大きく変えない光ファイバー敷設工事は、普通決議で実施できるとされています。
普通決議とは、標準管理規約では総会に出席した組合員の議決権の過半数で決める決議のことです。
光ファイバーの敷設工事は普通決議で足りる
国土交通省のマンション標準管理規約のコメントでは、光ファイバー敷設工事の決議について記載があります。既存のパイプスペースを使い、共用部分の形を変えない工事なら普通決議で実施可能という考え方です。
外壁に穴を開ける工事でも、建物の骨組みを大きく加工せず外観を戻せば普通決議で足りるとされています。骨組みを大きく削る工事は特別決議が必要になる可能性もあるため、事業者の工事計画を確かめましょう。
費用の集め方は管理規約で確かめる
回線の利用料を管理費から払うなら、管理規約の定めと合うかを確かめます。管理費の使い道に回線料が含まれていなければ、規約の変更が必要になることもあるでしょう。
規約の変更は、普通決議より要件の厳しい特別決議で決める事項です。判断に迷う場合は、管理会社やマンション管理士に相談してみましょう。
一括導入を進める3つの手順

一括導入は、配線方式の確認と見積もりの比較を経て、総会決議と住民への案内に進みます。
相見積もりとは、複数の事業者から同じ条件で見積もりを取って比べることです。
現在の配線方式を調べる
建物の配線方式は、管理会社や回線事業者に問い合わせると確認できます。VDSL方式でも、共用部に光配線用の設備を置けば切り替えられる場合があるでしょう。
NTT東日本は2024年11月、入居者から光配線化の要望を受け付ける窓口を開設しました。住民の要望が集まっているなら、理事会から事業者へ相談するよい機会です。
複数の事業者から見積もりを取る
見積もりは2〜3社から取り、同じ項目で比べると違いがわかります。比べたい項目を次に並べました。
- 初期費用:工事費を一括で払うか、利用料に含めるか
- 利用料:1戸あたりの金額と支払い方法
- 契約期間:最低利用期間と違約金の計算方法
- サポート:住民からの問い合わせ窓口と受付時間
契約終了後の設備の扱いも比べておくと安心です。
総会で決議し住民に案内する
理事会で事業者を絞り込んだら、総会の議案に費用と工事日程、契約期間を記載します。説明会を事前に開くと、反対している住民の疑問にも答えられるでしょう。
決議のあとは、工事日と室内工事の立ち会いの有無を掲示板や書面で全戸へ知らせます。
よくある質問
一括導入後に個別で光回線を引くことはできますか?
一括導入の費用は修繕積立金から出せますか?
賃貸に出している住戸の入居者も使えますか?
まとめ|配線方式を確かめて理事会で検討を始めましょう

インターネットの一括導入は、VDSL方式から光配線方式に変えれば回線速度の上限を引き上げられる取り組みです。
管理会社に建物の配線方式を問い合わせ、2〜3社の見積もりを取り寄せてみましょう。
根拠のある数字をそろえておけば、住民の理解を得ながら快適な通信環境を整えられます。


