この記事の要点
- 家賃滞納は支払日の翌日に入金を確かめ、管理会社と保証会社へ連絡すると、ローン返済への影響を小さくできる
- 契約解除は3か月程度の滞納がひとつの目安で、内容証明郵便の催告から明け渡し訴訟、強制執行まで半年以上かかる
- 鍵の交換や荷物の撤去は違法な自力救済と判断されやすく、逆にオーナーが損害賠償を求められるおそれがある
「家賃が入っていない、ローン返済日はもうすぐなのに…」
「すぐに出ていってもらうことはできるの?」
管理会社からの連絡で、初めての家賃滞納に戸惑うオーナーは少なくありません。そう考えても、入居者は借地借家法で守られており、オーナーの判断で退去させることは認められていません。家賃収入でローンを返している区分マンションの場合、1か月の未入金でも自己資金からの持ち出しが生じます。
滞納が起きたとき、何から手をつければよいのかわからず不安になるのは自然なことです。家賃滞納は、決まった順番どおりに早めに動けば、回収できる見込みが高まります。
保証会社の立て替えや法的手続きの使い分けを知っていれば、慌てて違法な督促に走る心配もありません。
本記事では、滞納発生から明け渡しまでの対応手順とNG行動、予防策を紹介します。
滞納の連絡を受けても、次に何をすべきか落ち着いて判断できるでしょう。
マンション投資で家賃滞納が起きたらどうなる?

家賃滞納は空室と並ぶマンション経営のリスクで、家賃が入らないままローン返済と管理費の支払いが続きます。
家賃滞納の発生率
家賃滞納とは、契約で決めた支払日を過ぎても家賃が支払われない状態のことです。日本賃貸住宅管理協会の調査では、2023年度の全国の1か月滞納率は1.2%、2か月以上の滞納率は0.5%でした。
同じ調査で、保証会社の利用を必須にしている管理会社は93.0%にのぼります。1か月滞納率に比べ2か月以上の滞納率は低く、長期化するのは一部とみられる状況です。
参照:日本賃貸住宅管理協会「第28回賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」
家賃滞納への対応手順

家賃滞納への対応は、確認と連絡から始めて、段階的に強い手段へ進めるのが基本です。
- 入金状況の確認と連絡
- 保証会社・連帯保証人への請求
- 内容証明郵便での催告
- 契約解除と明け渡し訴訟
順番を守ると、裁判でも督促の経緯を示せます。
入金状況の確認と連絡
支払日の翌日には、入金の有無を管理会社と確かめましょう。滞納の原因は、口座の残高不足や振込忘れといった単純なミスであることも多いからです。
管理会社は電話や書面で入居者に連絡し、支払日を約束してもらいます。オーナーが直接やり取りするより、感情的なトラブルを避けられるでしょう。
保証会社・連帯保証人への請求
家賃保証会社とは、入居者に代わって滞納家賃を立て替える会社のことです。決められた期限内に滞納を届け出れば、家賃が立て替えられます。
連帯保証人には、入居者と同じ責任で支払いを求めることが可能です。2020年4月以降に結ぶ個人の連帯保証は、極度額を書面で定めないと民法465条の2により無効となります。
内容証明郵便での催告
督促に応じない状態が続いたら、内容証明郵便で支払いを求めましょう。
内容証明郵便とは、いつ・誰に・どんな文書を送ったかを郵便局が証明する郵便のことです。
文面には滞納額と支払期限、期限までに払わなければ契約を解除する旨を書きます。民法541条の催告にあたり、契約解除の前提となる記録です。
契約解除と明け渡し訴訟
滞納が3か月程度続くと、契約解除が認められやすいとされます。判例では、家賃の滞納で当事者の信頼関係が壊れたといえるかで判断されてきました。
入居者が退去しない場合は、明け渡し訴訟を起こし、判決後に強制執行を申し立てます。事案によりますが、明け渡しまで半年から1年程度かかると見込んでおきましょう。
家賃回収に使える法的手続きの違い

家賃回収の法的手続きは、取り戻したいのが滞納家賃か部屋の明け渡しかで選び分けます。
3つの手続きの比較
滞納家賃の回収と明け渡しに使える主な手続きを、比較すると次のとおりです。
| 手続き | 対象 | 特徴 |
| 支払督促 | 滞納家賃 | 書類審査のみで出頭不要、異議が出ると通常訴訟へ移る |
| 少額訴訟 | 60万円以下の滞納家賃 | 原則1回の審理で判決が出る |
| 明け渡し訴訟 | 部屋の明け渡しと滞納家賃 | 退去させるには必要、判決まで数か月かかる |
退去まで求めるなら、支払督促や少額訴訟ではなく明け渡し訴訟を選びましょう。
弁護士に相談する目安
連絡が取れない入居者や明け渡しを求める場合は、弁護士への相談が向いています。書類の不備があると、訴訟と強制執行に時間がかかるためです。
弁護士費用と強制執行の実費は、合わせて数十万円かかる例もあります。滞納額と費用を比べて依頼するか決めましょう。
オーナーがやってはいけない対応

家賃滞納が起きても、オーナーが法的手続きを経ずに入居者を追い出すことは認められていません。
違法な対応をすると、オーナーが入居者から損害賠償を求められるおそれがあります。
自力救済にあたる行為
自力救済とは、裁判などの手続きを経ずに、自分の力で権利を実現しようとする行為のことです。無断入室は住居侵入罪、荷物の処分は器物損壊罪に問われる可能性があります。
- 無断入室:スペアキーを使って入居者の部屋に入る
- 鍵の交換:入居者を締め出すために鍵を取り替える
- 荷物の撤去:室内の家財を運び出して処分する
明け渡しは、判決と強制執行を経て実現させましょう。
違法になりうる督促
督促の方法も、度を越すと入居者のプライバシー侵害や名誉毀損にあたるおそれがあります。次のような督促は避けましょう。
- 深夜・早朝の連絡:貸金業法の取立て規制が目安とする夜9時から朝8時の電話や訪問
- 張り紙:玄関ドアやポストに滞納を知らせる紙を貼る
- 第三者への連絡:勤務先や連帯保証人以外の家族に支払いを求める
督促は管理会社か保証会社に任せ、記録が残る方法で進めるのが安全です。
家賃滞納を防ぐ3つの対策

家賃滞納は、入居前の審査と支払いの仕組みづくりで発生を減らすことが可能です。
- 入居審査の確認
- 家賃保証会社への加入
- 口座振替・カード払いの導入
3つとも、次の募集から取り入れられます。
入居審査の確認
入居審査では、勤務先や勤続年数、年収に対する家賃の割合が主な確認項目です。家賃は月収の3分の1以内が一般的な目安とされています。
オーナーは、管理会社から審査基準と結果の報告を受けられるか確認しましょう。過去の滞納率を聞けば、管理会社ごとの審査の厳しさを比べられます。
家賃保証会社への加入
入居の条件として家賃保証会社への加入を求めると、滞納時も家賃の立て替えを受けられます。保証料は入居者が負担する契約が一般的です。
保証の上限額や滞納の届け出期限は、保証会社ごとに異なります。届け出が遅れると保証を受けられないこともあるため、管理会社と期限を共有しておきましょう。
口座振替・カード払いの導入
家賃の支払い方法を口座振替やクレジットカード払いにすると、振込忘れによる滞納を防げます。毎月決まった日に自動で引き落とされ、入居者の手間も省けるでしょう。
保証会社によっては、家賃の引き落としと立て替えを一体で行うプランもあります。次の入居者の募集時に、支払い方法の条件を管理会社と決めておきましょう。
よくある質問
家賃を1か月滞納されただけで退去してもらえますか?
滞納された家賃は何年さかのぼって請求できますか?
管理会社が督促しても入居者が払わない場合はどうすればよいですか?
まとめ|家賃滞納は早めの確認と正しい手順で対応しよう

家賃滞納は、翌日の入金確認から保証会社への請求、内容証明郵便と段階を踏んで対応します。鍵の交換や荷物の撤去といった自力救済は、オーナー側が責任を問われる行為です。
まずは管理会社に、滞納時の連絡体制と保証会社の届け出期限を確認してみましょう。
手順を事前に決めておけば、滞納が起きても家賃収入とローン返済への影響を小さく抑えられます。


