この記事の要点
- マンションは相続税評価額が現金より低く、賃貸に出せば評価額をさらに抑えられる場合がある
- 生前贈与は相続時精算課税なら累計2,500万円まで、暦年贈与なら毎年110万円まで贈与税がかからない
- 名義変更には登録免許税2.0%と不動産取得税3%がかかり、費用は相続より高くなりやすい
「現金のまま相続させると、家族に重い税金がかかってしまうのでは」
「元気なうちに、子どもへ資産を渡しておきたい」
そんな不安を抱える方は少なくありません。
相続財産に占める現金や預貯金の割合が高いほど、相続税の負担は大きくなりやすい傾向です。マンションのような不動産は評価額を抑えやすく、生前贈与と組み合わせる相談も増えています。
仕組みを正しく理解すれば、マンション投資と生前贈与の組み合わせが選択肢に入ります。家族に残る資産を増やしながら、税負担も軽くできるでしょう。
本記事では、マンションの生前贈与が相続税対策になる理由から手続き、費用までを順に整理しました。2024年の税制改正で変わった点も取り上げます。
読み終えるころには、贈与と相続のどちらが自分に向くか判断できるでしょう。
マンション投資の生前贈与が相続税対策になる理由

マンションの生前贈与が相続税対策になる理由は、評価額の低さにあります。
現金は額面がそのまま課税対象になりますが、不動産は取引価格より低い評価額で計算されます。
現金より下がる相続税評価額の仕組み
マンションの相続税評価額は、時価より低く算定されます。土地は路線価、建物は固定資産税評価額をもとに計算する仕組みです。
路線価は公示価格のおおむね8割、建物の評価額は建築費の5〜7割程度が目安とされています。同じ資産価値でも、現金より不動産に換えたほうが課税対象を抑えやすくなります。
賃貸に出すとさらに評価が下がる
賃貸マンションは、自分で使う不動産よりも評価額が下がります。人に貸している土地や建物は、貸主が自由に使えないためです。
賃貸中の土地は貸家建付地として、建物は借家権割合の分だけ評価が引き下げられます。
第三者へ貸す投資用マンションなら、評価額はさらに圧縮されます。
生前贈与で使う2つの贈与税制度

生前贈与で使う贈与税の制度は、暦年贈与と相続時精算課税の2つです。どちらを選ぶかで、非課税枠と申告の要否が変わります。
年110万円までの暦年贈与
暦年贈与とは、1年間に受け取った財産の合計から110万円を差し引いて贈与税を計算する方法です。110万円以内なら贈与税はかからず、申告も不要です。
マンションそのものは高額のため、持分を少しずつ分けて毎年贈与する使い方が向いています。
相続開始前の一定期間の贈与は、相続財産に加算される点に注意します。
2,500万円まで非課税の相続時精算課税
相続時精算課税とは、累計2,500万円まで贈与税をかけずに贈与できる制度です。60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与で選べます。
2,500万円を超えた分には一律20%の贈与税がかかり、贈与財産は相続時に加算して精算します。高額なマンションを一度に移したい場合に合った制度です。
2024年改正で変わった2つのポイント
2024年の改正で、生前贈与の使い方に2つの変更が入りました。
- 暦年贈与の加算期間:相続開始前3年から7年へ延長
- 相続時精算課税:毎年110万円の基礎控除を新設
この110万円分は相続財産に加算されず、毎年活用する使い方が有利になります。
マンションを生前贈与するメリット

マンションを生前贈与する主なメリットは、次の3つです。
- 贈与する相手と時期を自分で選べる
- 家賃収入を早い段階で子へ移せる
- 値上がり前の低い評価額で渡せる
いずれも相続を待つより、引き継ぎを計画的に進めやすくします。
贈与する相手と時期を選べる
生前贈与では、財産を渡す相手と時期を贈与する人が指定できます。相続の場合は、法定相続人での分割協議が前提です。
特定の子に収益物件を継がせたいときも、生前贈与なら意思を反映しやすくなります。
時期を分ければ、暦年贈与の非課税枠を複数年にわたって使えます。
家賃収入を早く移せる
収益マンションを早めに贈与すると、その後の家賃収入は子の財産です。親の資産として現金がたまり続けるのを抑えられます。
子は受け取った家賃を、生活費や将来の納税資金の準備に回せます。
デメリットも知って生前贈与の相続税対策を選ぶ

生前贈与には費用面のデメリットもあります。名義変更にかかる税金が、相続より高くなりやすい点です。
生前贈与と相続では、名義変更でかかる税金が異なります。主な違いを整理しました。
| 税金 | 生前贈与 | 相続 |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の2.0% | 固定資産税評価額の0.4% |
| 不動産取得税 | 固定資産税評価額の3%(住宅・土地) | かからない |
表のとおり、名義変更にかかる税金は生前贈与のほうが高くなります。費用を含めて損得を見極める必要があります。
登録免許税と不動産取得税がかかる
生前贈与では、登録免許税と不動産取得税の2つがかかります。登録免許税は名義変更の登記で納める税金です。
登録免許税法では、贈与は固定資産税評価額の2.0%と定められ、相続の0.4%より高くなります。
地方税法の軽減措置により、不動産取得税は2027年3月末まで評価額の3%です。
小規模宅地等の特例が使えない
生前贈与で渡した土地には、小規模宅地等の特例が使えません。この特例は、相続した宅地の評価額を大きく下げる制度です。
租税特別措置法の特例では、要件を満たす賃貸用の宅地なら200平方メートルまで評価額を50%減らせます。
特例が使える土地は、相続で引き継ぐほうが有利な場合があります。
生前贈与が向いているマンション投資のケース

マンションの生前贈与が向くのは、費用を上回る節税効果が見込めるケースです。物件の収益力や値上がり見込みから判断します。
生前贈与が向いているのは、主に次の3つのケースです。
- 家賃収入が安定した収益力の高い物件
- 将来の値上がりが見込める立地の物件
- 相続開始まで時間の余裕がある場合
収益力の高い賃貸マンション
入居需要が安定した賃貸マンションは、生前贈与に向いています。家賃収入をそのまま子へ移せるためです。
評価額を抑えつつ、継続的な収入源も引き継げます。都心の駅近ワンルームなど、空室になりにくい物件が候補になります。
将来の値上がりが見込める物件
値上がりが期待できる物件は、早めの贈与が効果的です。贈与税や相続税は、贈与した時点の評価額で計算されるためです。
再開発やインフラ整備が進む地域のマンションは、価格上昇が見込めます。低い評価額のうちに贈与したほうが、税負担を抑えやすくなります。
マンションを生前贈与する手続きと費用

マンションの生前贈与は、契約書の作成から登記、申告まで3つの手順で進めます。
手続きを誤ると、贈与が成立しないおそれもあります。
贈与契約書の作成
最初に、贈与契約書を作成します。贈与契約書とは、財産を無償で渡す約束を書面にしたものです。
口約束では贈与の事実を証明しにくくなります。物件の所在地や贈与日、双方の署名を明記して残しておきます。
法務局での名義変更登記
次に、法務局で所有権移転登記を行います。登記によって、物件の名義が親から子へ正式に変わります。
登記には固定資産評価証明書などの書類が必要で、司法書士へ依頼する方法が一般的です。この際に、評価額の2.0%の登録免許税を納めます。
贈与税の申告と納税
最後に、贈与を受けた子が贈与税の申告と納税を行います。申告期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。
暦年贈与で110万円以内なら申告は不要です。相続時精算課税を選ぶ場合は、金額にかかわらず届出と申告が必要になります。
よくある質問
生前贈与と相続はどちらが得ですか?
借入金が残ったマンションでも贈与できますか?
生前贈与の7年ルールとは何ですか?
特定の子だけに贈与するとトラブルになりますか?
まとめ|マンション投資の生前贈与で家族の負担を減らそう

マンションの生前贈与は、現金より低い評価額で資産を渡せるため、相続税対策として効果が期待できます。暦年贈与と相続時精算課税を、物件や期間に合わせて使い分ける点が重要です。
まずは手持ちの資産のうち、現金と不動産の割合を書き出してみましょう。贈与と相続のどちらが向くかを整理すると、次の一歩が見えてきます。
早めに準備を始めるほど、非課税枠を活かせて家族に残せる資産も増えていきます。


