この記事の要点
- 表面利回りは経費を含まない「年間家賃収入÷物件価格」の数字で、広告に載るのはこちら
- 実質利回りは管理費や税金などの経費を引いた数字で、価格2,000万円の例では表面6.0%が実質4.5%まで下がる
- 区分マンションの平均表面利回りは6.67%、実質は3〜3.5%を目安に自分で計算する
物件情報サイトで「利回り8%」という数字を見て、心が動いた経験はないでしょうか。
「この数字を信じて買って大丈夫だろうか…」
「手元に残るお金は本当にこれくらい?」
広告に載る利回りの多くは、経費を含まない表面利回りです。同じ物件でも、実質利回りで見ると数字は下がります。
この差を知らずに買うと、想定より手残りが少なく返済に追われかねません。2つの利回りの違いと計算方法が分かれば、広告の数字に惑わされず物件を見極められます。
本記事では、両者の違い、計算方法、相場、注意点を整理しました。
読み終えたころには、広告の利回りを自分で見極められるようになるでしょう。
マンション投資の表面利回りと実質利回りの違いとは

利回りとは、投資した金額に対して1年間で見込める収益の割合です。
マンション投資では主に表面利回りと実質利回りが使われます。
一番の違いは、経費を計算に含めるかどうかです。
表面利回りとは
表面利回りとは、年間家賃収入を物件価格で割った、経費を含まない利回りです。グロス利回りとも呼ばれます。
広告に載る数字が表面利回り中心なのは、家賃と価格だけで一律に計算できるからです。実質利回りは経費の前提が物件ごとに変わり、売り手が広告で示しにくいためです。
実質利回りとは
実質利回りとは、家賃収入から経費を引いた額を、物件価格に諸費用を加えた額で割った利回りです。ネット利回りとも呼ばれます。
運用コストが反映され、実際の収益に近い数字になります。物件を比べる段階の基準です。
2つの利回りの違いを比較
表面利回りと実質利回りの違いを、経費の扱いと用途で整理すると次のとおりです。
| 観点 | 表面利回り | 実質利回り |
| 経費の扱い | 含めない | 差し引く |
| 諸費用 | 含めない | 分母に加える |
| 数字の傾向 | 高く出る | 低く出る |
| 主な用途 | 広告・概算比較 | 実際の投資判断 |
広告の高い数字は表面利回りが中心です。判断の軸を実質利回りに置くと、見た目に惑わされずに済みます。
表面利回り・実質利回りの計算方法

利回りの計算式は、表面も実質もシンプルです。
同じ物件でも2つの数字には差が生まれます。
表面利回りの計算式と具体例
表面利回りは「年間家賃収入÷物件価格×100」で求めます。
物件価格2,000万円、家賃が月10万円(年間120万円)なら、120÷2,000×100で6.0%です。
実質利回りの計算式と具体例
実質利回りは「(年間家賃収入−年間経費)÷(物件価格+諸費用)×100」で求めます。
同じ物件で年間経費24万円、諸費用140万円と仮定します。(120−24)÷(2,000+140)×100で、約4.5%です。
同じ物件で利回りにどれだけ差が出るか
同じ物件でも、表面6.0%が実質では約4.5%と、1.5ポイント下がりました。
中古で修繕費がかさむ物件では、差が2ポイント以上開くこともあります。
実質利回りを重視すべき理由

投資判断で軸にすべきは、表面利回りではなく実質利回りです。
手元に残るのは、経費を差し引いた後の金額だからです。
広告の利回りを鵜呑みにするリスク
広告の利回りは経費を含まない表面利回りが中心で、満室想定の数字も混ざります。
鵜呑みにすると、購入後に「思ったより残らない」という誤算が起きます。表示された数字が何を指すのか、まず確かめましょう。
経費を反映した数字が手残りに直結する
ローン返済や生活の足しになるのは、経費を引いた後のお金、つまり実質利回りです。
表面利回りが同じ6%でも、経費が軽い物件を選べば手元に残る額は増えます。
想定利回りとの違いにも注意する
想定利回りとは、満室を前提に想定家賃で計算した利回りで、新築や空室のある物件で使われます。
現実には空室や家賃下落が起こり、想定どおりの収入が続くとは限りません。
マンション投資でかかる費用の内訳

実質利回りを正しく計算するには、費用の把握が欠かせません。
費用は購入時の初期費用と、保有中の運用コストに分かれます。加えて、空室や家賃下落という見えにくいコストもあります。
購入時にかかる初期費用
購入時には物件価格のほかに諸費用がかかり、一般に物件価格の7〜10%程度です。
主な初期費用は次のとおりです。
- 仲介手数料
- 登記費用(登録免許税・司法書士報酬)
- 不動産取得税
- 印紙税・ローン事務手数料
これらは実質利回りの分母に加えます。見落とすと利回りを高く見積もってしまいます。
保有中にかかる運用コスト
保有中は毎年ランニングコストが発生し、実質利回りの分子から差し引かれます。
代表的な運用コストは次のとおりです。
- 管理費・修繕積立金
- 固定資産税・都市計画税
- 賃貸管理会社への管理委託費
- 火災保険料・原状回復費
区分マンションでは管理費と修繕積立金の負担が大きくなりがちです。
空室・家賃下落という見えないコスト
家賃収入は満室が続く前提では計算できません。空室期間や家賃下落も実質的なコストです。
退去すれば家賃はゼロになり、築年数が進めば家賃も下がります。
表面利回りと実質利回りの相場の目安

利回りの相場は、物件種別やエリア、築年数によって変わります。
見ている物件が高いか低いかは、相場と照らして判断します。
区分マンションの利回り相場
投資用区分マンションの平均表面利回りは、6.67%が1つの目安です。健美家の調査による2025年7〜9月期の全国平均で、平均価格は2,463万円でした。
これは全国平均で、都心の新築や築浅はこれより低くなりやすい傾向です。
参照:健美家「収益物件市場動向四半期レポート(2025年7〜9月期)」
エリア・築年数による違い
利回りはエリアと築年数で大きく変わります。都心や築浅ほど価格が高く、利回りは低めに出ます。
地方や築古では価格が下がり、利回りは高く表示されがちです。
実質利回りの最低ラインの考え方
実質利回りの最低ラインは、都心の区分で3〜3.5%程度が1つの目安とされます。
ローン金利を上回る利回りを確保できなければ、収支が赤字に傾きかねません。金利より低い実質利回りは避ける基準を持つと、判断がぶれにくくなります。
利回りを見るときの注意点

利回りは重要な指標ですが、それだけで投資を決めるのは危険です。
高い利回りの裏にはリスクが潜むこともあります。
高利回り物件に潜むリスク
利回りが極端に高い物件には、相応の理由があると考えたほうが安全です。
都心の期待利回りは低水準で横ばいが続いており、日本不動産研究所の調査では東京・城南のワンルームで3.7%です。これを大きく上回る物件は、立地や築年数に弱点があります。
参照:日本不動産研究所「第53回不動産投資家調査(2025年10月現在)」
利回りだけで投資判断をしない
利回りは判断材料の1つにすぎません。立地や賃貸需要、将来の資産価値も見る必要があります。
利回りが高くても、入居者が集まらなければ収入は途絶えます。
複数の利回りを自分で計算して比べる
物件を比べるときは、表面・実質・想定の各利回りを自分で計算し直すことをおすすめします。
広告値は前提がそろわないため、同じ条件で計算し直して物件を公平に並べます。
よくある質問
表面利回りと実質利回りはどちらを重視すべきですか?
実質利回りは何%あれば安心できますか?
利回りの計算は自分でやる必要があるのでしょうか?
表面利回りが高い物件は良い物件といえますか?
まとめ|2つの利回りを理解して失敗しない物件選びを

表面利回りは経費を含まない広告向けの数字で、実質利回りは経費を引いた実際に近い数字です。価格2,000万円の例では、表面6.0%が実質4.5%まで下がりました。
まずは気になる物件の家賃と価格、経費を書き出し、実質利回りを自分で計算してみましょう。
2つの利回りの違いを押さえれば、広告の数字に惑わされず、手残りを見据えた物件選びができるでしょう。


