この記事の要点
- 賃貸物件のオーナーでも、契約中の家賃変更や普通借家契約の更新拒絶を自由に決められるわけではない
- 普通借家契約で更新を拒絶したり解約を申し入れたりする場合は、借地借家法28条の「正当事由」が重要
- 将来の退去時期を明確にしたい場合は定期借家契約も選択肢だが、契約時の説明や終了通知など所定の手続がある
アパートやマンションはオーナーの所有物です。ただし、入居者に建物を貸した後は、貸主と借主の関係に借地借家法が関わります。
特に家賃の値上げ、普通借家契約の更新拒絶、立ち退きには法律上のルールがあり、オーナー側の都合だけで進められない場合があります。この記事では、賃貸オーナーが押さえておきたい借地借家法の基本を、家賃・更新・立ち退きの3つを中心に解説します。
借地借家法とは?オーナーに関係するルールを確認

借地借家法は、建物を所有するために土地を借りる「借地」と、アパートやマンションなどの建物を借りる「借家」に関するルールを定めた法律です。
賃貸住宅のオーナーに特に関係するのは、建物賃貸借について定めた26条以降です。普通借家の更新、オーナーからの解約、家賃の増減、定期借家などが規定されています。
| 項目 | 主な規定 |
|---|---|
| 普通借家の更新 | 借地借家法26条 |
| オーナーからの解約 | 借地借家法27条 |
| 更新拒絶・解約の正当事由 | 借地借家法28条 |
| 家賃の増減 | 借地借家法32条 |
| 定期借家契約 | 借地借家法38条 |
物件を所有していることと、賃貸借契約の条件を自由に変更できることは別です。条件変更や退去を求めるときは、契約書だけでなく借地借家法も確認しましょう。
家賃はオーナーの判断だけで値上げできる?

物価や修繕費、税負担などが上がると、「今の家賃では低いので値上げしたい」と考えることもあります。
借地借家法32条では、土地・建物に対する税負担の増減、土地・建物価格や経済事情の変動、近隣の同種物件との家賃差などにより現在の家賃が不相当となった場合、貸主または借主が将来に向かって家賃の増減を請求できると定めています。
つまり、オーナーが家賃の増額を求めること自体はできます。ただし、「来月から5,000円上げます」と伝えれば、その金額で必ず決まるわけではありません。
入居者と折り合わない場合は、話し合いや調停、訴訟へ進む可能性もあります。値上げを検討する場合は、近隣の類似物件の賃料や税負担の変化など、増額の根拠になる資料を準備しておくことが重要です。
なお、一定期間は家賃を増額しない旨の特約がある場合は、その定めに従うとされています。まず現在の賃貸借契約書を確認しましょう。
普通借家は「2年契約が終われば退去」ではない

賃貸住宅では、契約期間を2年としているケースが多くあります。しかし、普通借家契約であれば、2年が経過しただけでオーナーが自由に契約を終了できるとは限りません。
借地借家法26条では、期間の定めがある建物賃貸借について、期間満了の1年前から6か月前までの間に、更新しない旨などの通知をしなかった場合、原則として従前と同じ条件で契約を更新したものとみなします。ただし、更新後の期間は定めがないものとなります。
さらに、オーナー側から更新を拒絶する場合には、借地借家法28条の「正当事由」が必要です。
正当事由の判断では、貸主と借主が建物を必要とする事情のほか、これまでの賃貸借の経過、建物の利用状況・現況、明け渡しに際して金銭などを提供する申出があるか、といった事情が考慮されます。
したがって、「契約期間が終わった」「売却したい」「自分で使いたい」といった事情があっても、それだけで必ず更新拒絶が認められるとは限りません。
立退料を払えば必ず退去してもらえる?

「立退料を払えば退去してもらえる」と考えられることがありますが、借地借家法にそのような一律のルールはありません。
借地借家法28条では、オーナーが明け渡しの条件として金銭などを提供する申出も、正当事由を判断する事情の一つとされています。そのため、立退料を提示しただけで必ず正当事由が認められるわけではありません。
一方で、「立ち退きを求めるなら家賃6か月分を支払う」といった金額も法律では決められていません。
また、期間の定めがない建物賃貸借についてオーナーから解約を申し入れた場合、借地借家法27条では、原則として申入れから6か月を経過することで契約が終了するとしています。ただし、この場合も28条の正当事由が必要です。
つまり、「6か月前に伝えれば退去してもらえる」と単純に考えるのは避けましょう。実際の立ち退きは個別事情の影響が大きいため、交渉前に弁護士などへ確認する方法もあります。
退去時期を決めたいなら定期借家も選択肢

将来、自宅として使う予定がある、建て替え時期が決まっているなど、契約終了時期を明確にしたい場合は「定期借家契約」を検討できます。
借地借家法38条に基づく定期借家契約は、契約で定めた期間が満了すると、更新されることなく終了する仕組みです。普通借家のように、期間満了時の更新拒絶について正当事由を求められない点が大きな違いです。
ただし、契約書に「定期借家」と書けばよいわけではありません。借地借家法38条では、書面などで契約することに加え、契約前に「更新がなく、期間満了によって契約が終了する」ことを借主へ書面を交付して説明することが求められています。
さらに、契約期間が1年以上の場合、原則として期間満了の1年前から6か月前までの間に、契約終了を借主へ通知する必要があります。国土交通省も同様の流れを示しています。
なお、双方が合意すれば、期間満了後に新たな契約を結ぶ「再契約」は可能です。
よくある質問(FAQ)

Q. オーナーは入居中でも家賃を値上げできますか?
借地借家法32条では、税負担や経済事情の変化、近隣の同種物件との比較などから現在の家賃が不相当となった場合、増額を請求できます。ただし、オーナーが提示した金額で必ず確定するわけではありません。たとえば月5,000円の増額を通知しても、入居者と争いになる場合があります。値上げを検討するときは、周辺賃料など客観的な資料を準備しておきましょう。
Q. 2年契約が終われば更新を断れますか?
普通借家契約では、契約期間が2年でも、期間満了だけを理由に自由に更新を拒絶できるわけではありません。借地借家法26条では、更新しない旨などの通知時期を満了の1年前から6か月前までとしています。さらに、オーナーから更新を拒絶する場合には、借地借家法28条の正当事由が必要です。定期借家契約とは扱いが異なるため、契約の種類を確認しましょう。
Q. 立退料の相場は家賃6か月分ですか?
借地借家法には、立退料を「家賃6か月分」とする基準はありません。立退料は正当事由を判断する事情の一つであり、必要性や金額は個別の事情によって変わります。オーナー側と入居者側が建物を必要とする事情なども関係します。具体的な金額を判断する際は、弁護士などへの確認を検討してください。
Q. 定期借家なら期間満了で終了できますか?
借地借家法38条の要件を満たして締結された定期借家契約では、原則として期間満了で契約が終了します。ただし、契約時には更新がなく期間満了で終了する旨を事前に説明する必要があります。契約期間が1年以上の場合は、原則として満了の1年前から6か月前までに終了通知も必要です。手続を誤ると予定した時期に契約終了を主張できない可能性があります。
まとめ

借地借家法では、家賃変更、普通借家契約の更新、オーナーからの解約、定期借家などについてルールが定められています。
家賃を上げたい場合は32条、普通借家の更新や立ち退きでは26条から28条、定期借家では38条が特に重要です。オーナーであっても、契約期間が終わったという理由だけで自由に退去を求められるとは限りません。
将来的な売却、建て替え、自宅利用などを予定している場合は、入居募集の段階から契約方法を検討することが大切です。実際に家賃変更や立ち退きを進める際は契約書を確認し、必要に応じて管理会社や弁護士などの専門家へ相談してください。


