「更新なし」なら安心?定期建物賃貸借契約でオーナーが見落としやすい注意点

「更新なし」なら安心?定期建物賃貸借契約でオーナーが見落としやすい注意点

この記事の要点

  1. 定期建物賃貸借契約は、契約期間が終わると原則として更新されず、契約も終了する
  2. 契約前の説明や、1年以上の契約で必要になる終了通知など、オーナー側が守るべきルールもある
  3. 「定期借家なら期間が来れば必ず退去してもらえる」と考えず、契約から終了までの手続きを確認しておくことが大切

賃貸経営をしていると、「数年後に建て替えたい」「将来は自分や家族が使いたい」など、貸す期間をあらかじめ決めたいケースがあります。

このようなときに使われるのが、定期建物賃貸借契約(定期借家契約)です。

一般的な賃貸借契約との大きな違いは、契約期間が終わっても自動的に更新されない点です。ただし、「定期借家」と契約書に書けばそれで終わりというわけではありません。

この記事では、定期建物賃貸借契約の基本から、契約前の説明、終了通知、再契約など、オーナーが特に注意したいポイントをわかりやすく解説します。

定期建物賃貸借契約とは?普通借家との違い

制度の比較

定期建物賃貸借契約とは、最初に決めた契約期間が終わると、更新されずに契約が終了する仕組みです。

国土交通省も、定期建物賃貸借について、契約期間の満了によって更新されることなく終了する制度と説明しています。

たとえば、2026年10月1日から2028年9月30日までの2年間で契約した場合、原則として2028年9月30日で契約が終了します。

一方、一般的な普通建物賃貸借契約では、契約期間が終わっただけで、オーナーが自由に更新を断れるわけではありません。

借地借家法28条では、オーナー側から更新を拒絶する場合、オーナー自身が建物を使う必要性や、これまでの契約状況、建物の利用状況、立退料の申出などを踏まえた「正当事由」が必要とされています。

違いを簡単に整理すると、次のとおりです。

比較項目定期建物賃貸借契約普通建物賃貸借契約
契約期間が終わった後原則終了更新される場合がある
更新なしあり
続けて貸す場合再契約更新
契約方法書面などが必要口頭でも成立する場合がある
貸主から契約を終わらせる場合原則、期間満了で終了正当事由が必要

契約書に「定期借家」と書くだけでは足りない

契約書にハンコを押す画像

定期建物賃貸借契約で、まず注意したいのが契約前の手続きです。

借地借家法38条では、定期建物賃貸借契約は書面などで契約する必要があると定めています。

さらに重要なのが、契約を結ぶ前に、借主へ「この契約は更新されず、期間が終われば契約も終了する」と説明することです。

この説明は、通常の賃貸借契約で行われる重要事項説明とは別のものです。

たとえば、契約書に「契約期間2年・更新なし」と書いてあっても、契約前に必要な説明をしていなければ、定期建物賃貸借としての効力に問題が生じる可能性があります。

国土交通省では、事前説明の書面に「契約の更新がないこと」「契約が終了する日」などを記載することを示しています。

そのため、オーナーとしては、管理会社や仲介会社に任せている場合でも、「定期借家用の契約書を使っているか」だけでなく、事前説明まできちんと行われているかを確認しておくことが大切です。

なお、現在は借主の承諾があれば、契約や事前説明を電子データで行う方法も認められています。

出典:借地借家法38条、国土交通省「定期建物賃貸借」

1年以上の契約なら「終了通知」を忘れない

契約書に記入する画像

定期建物賃貸借契約は、契約期間が来れば終わる契約です。

ただし、契約期間が1年以上の場合は、オーナーから借主へ事前に終了を知らせる必要があります。

通知する時期は、契約満了の1年前から6か月前までです。

たとえば、2028年9月30日に契約が終了する場合、原則として2027年9月30日から2028年3月30日ごろまでの間に、借主へ終了通知を出します。

これは、借主が突然住む場所を失わないようにし、次の住まいを探す時間を確保するためのルールです。

通知を忘れるとどうなる?

ここは、オーナーが特に注意したい部分です。

終了通知を期限内に出さなかったからといって、定期建物賃貸借契約そのものが普通借家に変わるわけではありません。

ただし、通知が遅れた場合、オーナーは通知を出してから6か月が経過するまで、契約が終了したことを借主に主張できません。

たとえば9月30日に契約満了なのに、9月1日まで通知を忘れていた場合、9月30日にすぐ退去してもらえるとは限りません。

複数年の契約を結ぶ場合は、契約した時点で「終了通知を出す日」を管理表や予定表に登録しておくと安心です。

なお、契約期間が1年未満の場合、この終了通知は法律上必要ありません。

契約終了後も住んでもらうなら「再契約」

契約について相談する人物

定期建物賃貸借契約には、普通借家のような更新はありません。

ただし、「契約期間が終わったら必ず退去してもらわなければならない」という意味ではありません。

オーナーと借主の双方が「このまま住み続けたい」「引き続き貸したい」と合意すれば、新しく契約を結び直すことができます。

これが「再契約」です。

たとえば、最初に2年間の定期建物賃貸借契約を結び、満了後も住んでもらう場合、新しく2年間の契約を結び直します。

ここで大切なのは、再契約は単なる更新ではないという点です。

「今までと同じ借主だから、そのまま2年延長する」という扱いではなく、新しい契約として、定期建物賃貸借に必要な契約手続きや事前説明を改めて行う必要があります。

そのため、再契約を考えている場合でも、満了直前まで放置せず、終了通知を出す時期に合わせて今後の方針を決めておくとよいでしょう。

定期借家でも途中で退去される場合がある

定期借家の注意点

定期建物賃貸借契約を結べば、「契約期間中は必ず家賃が入り続ける」と考える人もいるかもしれません。

しかし、必ずしもそうとは限りません。

借地借家法38条では、一定の居住用住宅について、借主から途中で解約できる場合を定めています。

対象になるのは、床面積200㎡未満の居住用建物です。

借主に転勤、療養、親族の介護などのやむを得ない事情があり、その住宅に住み続けることが難しくなった場合、借主は途中解約を申し入れられることがあります。

この場合、解約の申入れから1か月が経過すると契約が終了します。

つまり、3年間の定期建物賃貸借契約を結んだからといって、必ず3年間分の家賃収入が確保できるわけではありません。

また、契約書の中で、法律とは別に「1か月前までに申し出れば解約できる」などの中途解約条項を設けている場合もあります。

オーナーは契約期間だけを見るのではなく、途中で解約できる条件も確認しておくことが大切です。

よくある質問(FAQ)

よくある質問

Q. 定期建物賃貸借契約は1年未満でも契約できますか?

はい。定期建物賃貸借契約は、1年未満でも契約できます。普通建物賃貸借では1年未満の期間を設定すると期間の定めがない契約として扱われますが、定期建物賃貸借では1年未満の契約も可能です。なお、契約期間が1年未満の場合、期間満了前の終了通知は法律上必要ありません。

Q. 定期建物賃貸借なら立退料を払わずに退去してもらえますか?

適切に定期建物賃貸借契約を結び、必要な手続きを行っていれば、原則として契約期間の満了で契約は終了します。普通建物賃貸借の更新拒絶とは仕組みが違うため、通常は立退料を支払って更新を拒絶する制度ではありません。ただし、契約前の説明や終了通知に不備がある場合などは状況が変わる可能性があります。実際に明渡しを求める場面では、必要に応じて弁護士などへ確認してください。

Q. 2年間の定期建物賃貸借契約では、いつ終了通知を出せばよいですか?

2年間の契約は1年以上なので、契約満了の1年前から6か月前までに終了通知を出します。たとえば2028年9月30日が満了日なら、原則として2027年9月30日から2028年3月30日ごろまでが通知時期です。通知が遅れると、通知から6か月が経過するまで契約終了を借主に主張できません。

Q. 定期建物賃貸借契約は自動更新できますか?

定期建物賃貸借契約に自動更新はありません。期間満了後も同じ借主に住んでもらう場合は、新しく契約を結ぶ「再契約」を行います。再契約する場合も、定期建物賃貸借として必要な契約手続きや事前説明を改めて行う必要があります。

まとめ

まとめ

定期建物賃貸借契約は、「数年後に建て替えたい」「将来は自分で使いたい」など、貸す期間をある程度決めておきたいオーナーにとって活用しやすい仕組みです。

ただし、「更新がないから安心」とだけ考えるのは注意が必要です。

契約前には「更新がなく、期間満了で終了すること」を説明し、1年以上の契約なら、満了の1年前から6か月前までに終了通知を出す必要があります。

さらに、契約を続ける場合は更新ではなく再契約となり、一定の条件では借主から途中解約されるケースもあります。

定期建物賃貸借を利用する場合は、契約するときだけでなく、契約期間中と終了前まで含めて管理することが、トラブルを防ぐポイントです。

著者

クラウド管理編集部

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