この記事の要点
- アパートの初期費用には、敷金・礼金・前家賃・仲介手数料・保証会社の費用などがある
- オーナーが主に調整できるのは、敷金・礼金・フリーレントなどの募集条件
- 初期費用を下げる際は、入居しやすさだけでなく、退去時のリスクや収益への影響も確認
アパートを探す入居希望者にとって、毎月の家賃だけでなく「契約時にいくら必要になるのか」も物件選びの重要なポイントです。
家賃が予算内でも、敷金や礼金などを含めた初期費用が大きければ、ほかの物件と比較される可能性があります。そのため、空室が続いている物件では、初期費用の設定を見直すことも選択肢の一つです。
ただし、初期費用にはオーナーが設定できるものと、仲介会社や保証会社などが決めるものがあります。
この記事では、アパートの初期費用の内訳やオーナーが見直しやすい費用、設定時に確認しておきたいポイントを解説します。
アパートの初期費用には何が含まれる?

アパートの初期費用とは、入居者が賃貸借契約を結ぶ際に必要となる費用の総称です。
国土交通省も、民間賃貸住宅への入居時には、契約内容に応じて敷金や礼金、保証金などが必要になる場合があると案内しています。
代表的な初期費用は次のとおりです。
| 費用 | 内容 | オーナーの関与 |
|---|---|---|
| 敷金 | 家賃滞納や原状回復費用などに備える預り金 | 大きい |
| 礼金 | 契約時に入居者から受け取る一時金 | 大きい |
| 前家賃 | 入居後の家賃を契約時に前払いするもの | 大きい |
| 共益費・管理費 | 共用部分の維持管理などに使う費用 | 大きい |
| 仲介手数料 | 仲介を行った不動産会社へ支払う費用 | 一部 |
| 保証会社の費用 | 家賃保証サービスを利用する費用 | 契約による |
| 火災保険料 | 入居者が加入する保険の費用 | 商品による |
| 鍵交換費用など | 鍵交換などに必要な費用 | 契約による |
初期費用を見直す場合は、まず「どの費用を誰が設定しているのか」を整理することが重要です。
オーナーが礼金を0円にしても、保証会社の費用や火災保険料などによって、入居者が支払う総額が大きくなる場合があります。
敷金は「収入」ではなく預り金

オーナーが特に理解しておきたいのが、敷金の扱いです。
民法622条の2では、敷金は賃料など賃貸借契約から生じる債務を担保する目的で入居者から受け取る金銭とされています。
賃貸借契約が終了して物件が返還された際には、家賃の未払いや入居者負担となる原状回復費用などを差し引き、残額を返還するのが基本です。
つまり、敷金1か月分を受け取っても、その全額がオーナーの利益になるわけではありません。
一方で、敷金を0円にすると入居者の初期負担は軽くなります。
たとえば家賃7万円で敷金を「1か月」から「0円」に変更すると、契約時に必要な金額は7万円減る計算です。
ただし、敷金を預からない場合は、家賃滞納や退去時の原状回復費用などへの備えも考える必要があります。家賃保証会社を利用している場合は、どこまで保証されるのかも確認しておきましょう。
礼金の見直しは初期費用を下げやすい

礼金もオーナーが調整しやすい項目です。
たとえば、家賃7万円の物件で礼金を1か月分から0円にすれば、入居者の契約時の負担は7万円下がります。
敷金とは異なり、礼金は原則として入居者へ返還することを前提とした預り金ではありません。そのため、礼金を0円にすると、オーナーが契約時に受け取る収入も減ることになります。
周辺の競合物件が「敷金0円・礼金0円」で募集しているなか、自分の物件だけ「敷金1か月・礼金1か月」となっている場合、初期費用の差が物件選びに影響する可能性もあります。
空室が続いている場合は、家賃だけでなく、周辺物件の敷金や礼金についても確認しておくとよいでしょう。
仲介手数料には上限がある

仲介手数料は、オーナーが自由に金額を設定できる費用ではありません。
国土交通省が定める「宅地建物取引業者が受けることのできる報酬の額」により、居住用建物の賃貸借では仲介会社が受け取れる報酬に上限があります。
貸主と借主の双方から受け取る場合、原則としてそれぞれ賃料の0.55か月分以内で、合計は賃料の1.1か月分以内です。消費税を含む割合となっています。
たとえば家賃7万円なら、合計の上限は7万7,000円です。
ただし、貸主と借主のどちらがいくら負担するかは、仲介の依頼内容や承諾の有無などによって異なります。
入居者の初期費用を下げたい場合は、仲介会社や管理会社に「契約時に入居者が支払う総額」を確認したうえで募集条件を考えることが大切です。
フリーレントを使う方法もある

初期負担を軽くする方法として、フリーレントを設定する方法もあります。
フリーレントとは、入居後の一定期間について家賃を無料にする募集方法です。
たとえば家賃7万円で1か月のフリーレントを設定すれば、入居者は7万円分の家賃負担を抑えられます。
一方、オーナー側から見ると、その1か月分の家賃収入を受け取らないことになります。
そのため、単純に「無料期間を設ければよい」と考えるのではなく、現在の空室期間と比較して判断することが重要です。
たとえば1か月分の家賃を無料にすることで入居が1~2か月早まるのであれば、結果として空室期間を短縮できる可能性があります。
フリーレントを設定する場合は、短期間で退去した場合の違約金などを契約条件に設けるケースもあるため、管理会社と相談しながら内容を決めてください。
初期費用を下げる前に空室の原因を確認する

空室が続いているからといって、すぐに敷金や礼金を0円にする必要はありません。
まず確認したいのは、どの段階で入居につながっていないのかです。
問い合わせそのものが少なければ、家賃や掲載写真、設備、立地条件などに原因があるかもしれません。
内見はあるのに申し込みにつながらない場合は、室内の印象や競合物件との設備差なども考えられます。
申し込みの直前に初期費用を理由として断られているのであれば、敷金・礼金やフリーレントの見直しが有効になる可能性があります。
管理会社に「問い合わせ件数」「内見件数」「申し込みに至らなかった理由」を確認し、初期費用が本当に空室の原因なのかを整理したうえで対策を考えましょう。
よくある質問(FAQ)

Q. アパートの初期費用はオーナーがすべて決められますか?
すべてを自由に決められるわけではありません。敷金・礼金・家賃・共益費・フリーレントなどは、オーナーが募集条件として関与しやすい項目です。一方、仲介手数料には宅地建物取引業法46条に基づく上限があります。保証会社や火災保険の費用についても、各社の契約内容によって異なります。
Q. 敷金0円にするとオーナーにはどのような影響がありますか?
家賃7万円で敷金1か月を0円にすれば、入居者の初期負担を7万円下げられます。一方、民法622条の2で定められているように、敷金には賃料などの債務を担保する役割があります。敷金を預からない場合は、家賃滞納や原状回復費用などへの備えを確認しておく必要があります。保証会社を利用する場合も、保証対象を確認してください。
Q. 礼金を0円にすると空室対策になりますか?
礼金を0円にすれば、礼金1か月の物件と比べて契約時の負担を家賃1か月分減らせます。家賃7万円なら7万円、8万円なら8万円の差です。ただし、必ず入居が決まりやすくなるとは限りません。周辺物件の募集条件や空室期間なども確認しながら判断しましょう。
Q. 原状回復費用はすべて入居者に請求できますか?
すべてを入居者負担にできるわけではありません。民法621条では、通常の使用による損耗や経年変化について、原則として入居者の原状回復義務から除かれています。国土交通省も「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表しています。契約条件を決める際は、ガイドラインや契約書の内容を確認し、判断に迷う場合は管理会社や専門家に確認してください。
まとめ

アパートの初期費用には、敷金・礼金・前家賃・仲介手数料・保証会社の費用などがあります。
このうち、オーナーが見直しやすいのは、敷金や礼金、フリーレントなどの募集条件です。
ただし、初期費用を下げれば必ず空室が解消するわけではありません。敷金をなくした場合のリスクや、礼金・フリーレントを設定した場合の収入への影響も考える必要があります。
まずは周辺物件の募集条件と、自分の物件が入居に至っていない原因を確認しましょう。そのうえで初期費用を調整すれば、無理に家賃を下げる以外の空室対策も検討しやすくなります。


