この記事の要点
- 法人化とは管理組合が法人格を得て組合名義で登記・契約できる状態で、各4分の3以上の決議と登記で成立する
- 主な利点は組合名義での不動産登記と財産の明確化で、平成14年の法改正で2名以上の組合なら法人化できる
- 収益事業がなければ法人税はかからず住民税の均等割も減免され得るため、税負担を理由に避ける必要は小さい
「うちのマンションも法人化した方がいいのだろうか」「手続きが面倒で、税金も増えそう…」。
管理組合の運営に関わる中で、こうした疑問を持つ理事長は少なくありません。
分譲マンションの管理組合は、区分所有法にもとづき自然に成立する団体です。
法律上は「法人」ではないため、資産の取得や契約の場面で名義の不便が生じることがあります。
管理組合の法人化は、正しく手順を踏めば理事長の負担を軽くし、組合運営を安定させることが可能です。
本記事では、法人化の基礎からメリット・デメリット、税金、手続きの流れまでを解説します。検討すべき組合の特徴と相談先の選び方も紹介します。
読み終えるころには、自分の組合が法人化に踏み切るべきか判断できるようになるでしょう。
マンション管理組合の法人化とは?基礎からわかる現状

管理組合の法人化とは、管理組合が法人格を取得し、組合名義で登記や契約を行える状態にすることです。
まずは通常の管理組合との違いと、どの程度の組合が法人化しているのかを整理します。
管理組合法人とは何か
管理組合法人とは、区分所有法にもとづき法人格を得た管理組合を指します。
通常の管理組合は「権利能力なき社団」と呼ばれ、団体として活動はできても法律上の法人ではありません。不動産は理事長など個人名義で登記していました。
法人化すると、組合そのものが権利や義務の主体になります。
通常の管理組合と管理組合法人の違いは、次のとおりです。
| 項目 | 通常の管理組合 | 管理組合法人 |
| 法律上の位置づけ | 権利能力なき社団 | 法人格あり |
| 不動産の登記名義 | 理事長など個人名義 | 管理組合法人名義 |
| 設立 | 建物の完成で当然成立 | 各4分の3以上の決議+登記 |
| 事務の負担 | 少ない | 役員変更ごとに登記が必要 |
特に違いが大きいのは登記名義と設立手続きで、組合名義で登記できる点が法人化の主な理由になります。
法人化している組合はどのくらいか
法人化している管理組合は、多数派ではありません。
国土交通省の平成30年度マンション総合調査によると、法人化していると回答した組合は全体の13.2%にとどまります。
築年数が古い組合ほど割合は高く、昭和45〜49年築のマンションでは41.1%が法人化しています。総戸数別では151〜200戸が23.9%と高い水準です。
参照:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果〔データ編〕管理組合向け調査(8管理組合法人登記の有無・30〜31ページ)」
マンション管理組合を法人化するメリット

法人化の利点は、組合名義での財産管理と、理事長個人に集中しがちな責任の分散にあります。
法人化で得られる主なメリットは次のとおりです。
- 組合名義で不動産の登記・契約ができる
- 団体と個人の財産を明確に区別できる
- 訴訟などの法的手続きを組合名義で行える
- 理事長個人に集中する責任・負担が軽くなる
組合名義で登記・契約ができる
法人化で得られる代表的なメリットは、組合名義で不動産の登記や契約ができる点です。
法人化していない組合では、集会所や敷地を取得しても個人名義で登記するしかありませんでした。名義人が亡くなると相続が絡み、権利関係が複雑になります。
法人化すれば、こうした財産を組合法人の名義で登記でき、権利の帰属が明確になります。契約時も、登記事項証明書で理事長の権限を証明できます。
財産を区別でき理事長の負担も軽くなる
法人化は、団体と個人の財産を明確に区別する効果もあります。管理組合法人固有の財産と区分所有者個人の財産が切り分けられます。
訴訟が必要な場面でも、組合法人の名義で当事者となれるため、手続きが安定します。理事長が個人で矢面に立つ負担も軽くなります。
法的な判断に迷う場合は、弁護士や司法書士へ確認すると安心です。
マンション管理組合を法人化するデメリットと注意点

法人化には費用と事務の手間という現実的な負担が伴います。すべての組合にとって最適とは限らない点も押さえておきます。
設立と維持に費用と手間がかかる
法人化で負担になるのは、設立と維持にかかる費用と手間です。設立には集会の決議や登記が必要で、司法書士へ依頼する場合はその費用もかかります。
法人として毎年の税務申告や各種届出といった事務作業も増え、これらを専門家へ委託すればその費用も見込む必要があります。
役員変更のたびに登記が必要になる
見落としやすい注意点として、役員変更のたびに登記が必要になります。理事長など代表者が交代した際は、原則2週間以内に変更登記を行わなければなりません。
手続きを怠ると過料の対象になる可能性があります。当面のあいだ財産取得や訴訟の予定がなければ、無理に法人化を急ぐ必要はありません。
意外と知らない|マンション管理組合の法人化と税金

法人化で税負担が大きく増えると誤解されがちですが、実際はそうとは限りません。
課税されるかどうかは、収益事業を行っているかどうかで分かれます。
収益事業がなければ法人税はかからない
管理組合法人は、区分所有法により法人税法上の公益法人等とみなされます。そのため、収益事業を行っていなければ法人税はかかりません。
収益事業とは、駐車場を区分所有者以外へ有料で貸し付ける場合など、33種類の事業を継続して営むものです。
組合員だけを対象とした通常の管理は、収益事業に当たりません。
住民税の均等割と登録免許税の扱い
法人住民税の均等割は、収益事業がなくても原則として課税の対象になります。公益法人等とみなされるため、都道府県や市区町村の条例により減免される場合があります。
減免を受けるには、自治体が定める期限までの申請が必要です。期限や要否は自治体ごとに異なります。設立登記にかかる登録免許税は、管理組合法人の場合はかかりません。
税務の判断に迷うときは、税理士や自治体の窓口へ確認すると確実です。
決議から登記まで|マンション管理組合の法人化の手続き

法人化は「総会での決議→法務局での登記→登記後の各種届出」という流れで進みます。
あわせて検討すべき組合の特徴も確認します。
決議から登記までの3ステップ
法人化の手続きは、区分所有法にもとづき次の3ステップで進みます。
- 総会で、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成による特別決議を得る
- 主たる事務所の所在地を管轄する法務局で設立登記を申請する
- 法人名義の口座開設や税務署などへの各種届出を行う
決議では法人化する旨と名称・事務所も定め、法人が成立するのは設立登記が完了した時点です。
検討すべきケースと相談先の選び方
法人化を検討すべきなのは、組合として不動産を取得・保有する予定がある場合です。権利関係が複雑な組合や、大規模な資産を扱う組合も向いています。
反対に、当面そうした予定がなければ急ぐ必要はありません。相談先は、登記を扱う司法書士と、管理全般に詳しいマンション管理士が中心です。
複数の専門家に見積もりを依頼し、費用と対応範囲を比べて選ぶと安心です。
よくある質問
マンション管理組合の法人化に費用はいくらかかりますか?
報酬額は事務所により幅があるため、複数の司法書士へ見積もりを取ると確実です。
法人化すると税金は増えますか?
法人住民税の均等割は原則課税されますが、条例により減免される場合があります。減免には、期限内の申請が必要です。
法人化の決議にはどのくらいの賛成が必要ですか?
総会で法人化する旨・名称・事務所を定めて決議します。
小規模なマンションでも法人化できますか?
まとめ|自分の組合に法人化が必要か見極めよう

マンション管理組合の法人化は、組合名義での登記や財産の明確化を実現し、理事長の負担を軽くする手段です。収益事業がなければ税負担も大きくは増えません。
まずは、組合として不動産を取得する予定があるか、権利関係が複雑になっていないかを確認してみましょう。
司法書士やマンション管理士へ相談すれば、自組合に合った判断がしやすくなります。
法人化の要否を正しく見極めることが、安定した組合運営への近道になります。


