この記事の要点
- おしゃれなリノベーションは、募集写真の印象を高め、築古物件の弱点を補う空室対策
- デザインだけを優先すると、工事費を家賃で回収できない可能性もある
- 周辺の家賃相場と入居者像を確認し、効果が見込める箇所から改修する
壁や床、照明を整えると、築古物件でも募集写真や内見時の印象を変えられます。ただし、工事だけで空室が解消するとは限りません。
総務省の「2023年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家は900万2,000戸、このうち賃貸用の空き家は443万6,000戸です。競合が多い地域では、内装や設備も比較されます。
この記事では、取り入れやすいリノベーション7つと、失敗しない進め方を紹介します。
おしゃれなリノベーションが空室対策になる理由

入居希望者の多くは、募集サイトの写真を見て内見する物件を絞ります。室内が暗い、設備が古く見える状態では、比較の段階で外される可能性があります。
リノベーションの目的は、単に新しく見せることではありません。単身者向けなら床色や室内物干し、ファミリー向けなら収納や水回りなど、入居者像に合わせることが大切です。
空室対策に使えるおしゃれなリノベーション7選

ここでは、空室対策に活用できるリノベーション7選を紹介します。
1.アクセントクロスを取り入れる
壁の一面だけに異なる色や柄の壁紙を使う方法です。白や淡いグレーを基本に、ネイビーや木目柄を加えると、募集写真でも違いが伝わりやすくなります。
暗すぎる色は部屋を狭く見せることがあるため、家具を合わせやすい色を選びましょう。
2.床材を変更する
床は室内で占める面積が大きく、色を変えると全体の印象が変わります。明るい木目は広く、濃い木目やグレー系は落ち着いて見えます。
DAIKENが示す参考価格では、8畳の床の張り替えは6万~12万円程度です。撤去や下地補修、防音仕様が必要な場合は追加費用がかかります。
3.照明をLEDへ交換する
古い蛍光灯や暗い照明は、内見時の印象を下げます。居室にはシンプルな照明、玄関や廊下には人感センサー付き照明を設置する方法があります。
故障時に交換しやすい器具かどうかも確認しましょう。
4.建具や取っ手の色を統一する
ドアや収納扉は、化粧シートを貼る、取っ手を交換するなど、部分的な工事でも印象を変えられます。
白、木目、黒など、室内で使う色を3色程度に絞ると統一感が生まれます。
5.見せる収納を設ける
ワンルームでは、大型収納を増設すると居住スペースが狭くなることがあります。壁面棚、ハンガーパイプ、可動棚なら、場所を取りすぎず収納を追加できます。
設置時は壁の下地と棚板の耐荷重を確認してください。
6.洗面所やトイレの清潔感を高める
水回りは古さが伝わりやすい場所です。床材、壁紙、鏡、水栓などを変更するだけでも印象を整えられます。
TOTOの施工事例を基にした参考価格では、便器交換と内装を含むトイレ工事は22万~36万円程度、洗面所は30万~70万円程度です。設備や配管の状態によって費用は変わります。
7.キッチンは部分交換を検討する
設備本体が使える場合は、扉への化粧シート施工、取っ手、水栓、コンロ、換気扇の交換に絞る方法があります。
交換時期が近い場合は、部分改修より全体交換のほうが管理しやすいこともあります。両方の見積もりを比較しましょう。
リノベーション費用の目安

以下は一般住宅を含む参考価格です。実際の金額は、広さや建物の状態によって異なります。
| 工事内容 | 参考価格 |
|---|---|
| 8畳の床の張り替え | 6万~12万円程度 |
| トイレ本体・内装の改修 | 22万~36万円程度 |
| 洗面所の改修 | 30万~70万円程度 |
| 水回り4点の改修 | 100万~300万円程度 |
住宅リフォーム推進協議会の2025年度調査では、当初予算の平均は310万円、実際の費用は平均405万円、中央値210万円でした。賃貸限定の調査ではありませんが、予算超過には注意が必要です。
失敗しない進め方

空室の原因を確認する
問い合わせが少ない場合は、家賃、募集写真、設備条件などに原因がある可能性があります。内見後に申込みが入らない場合は、室内の古さ、におい、清掃状態、共用部分を確認します。
原因を整理せずに工事を始めると、効果の薄い箇所へ費用を使うことになります。
入居者像を決める
大学周辺のワンルームと住宅地のファミリー物件では、必要な設備が異なります。管理会社や仲介会社に、内見者の指摘や近隣で成約している物件の特徴を確認しましょう。
回収期間を計算する
工事費120万円、家賃の上昇額を月5,000円、空室期間の短縮を年1か月、家賃を月6万5,000円と仮定します。
年間の収入改善額は「5,000円×12か月+6万5,000円」で12万5,000円です。単純計算の回収期間は「120万円÷12万5,000円」で約9.6年になります。
実際には、管理手数料、固定資産税、修繕費、借入金利も考慮します。
追加費用の条件を確認する
見積書は「内装工事一式」ではなく、床材、壁紙、設備、撤去費、廃材処分費などが分かれているか確認します。
住宅リフォーム推進協議会の調査では、予算を超えた理由として、設備のグレードアップが47.4%、工事箇所の増加が41.9%、想定外の補修が22.6%でした。追加工事は、オーナーの承認後に行う条件を書面で決めましょう。
工事前に確認したい注意点

国土交通省によると、2階建ての木造戸建てなどで主要構造部の過半を改修する大規模工事は、2025年4月以降、建築確認手続きの対象です。一方、水回り設備の交換や、構造上重要でない間仕切り壁の工事は、原則として対象外です。
共同住宅や区分マンションでは、管理規約や建物の構造によって扱いが異なります。判断に迷う場合は、建築士、管理会社、自治体の担当窓口へ確認してください。
また、原状回復とリノベーションは分けて管理しましょう。国土交通省の原状回復ガイドラインでは、通常使用による損耗や経年劣化は、原則として賃貸人側が負担する考え方が示されています。
よくある質問

Q.おしゃれなリノベーションの費用はいくらですか?
工事範囲によって異なります。参考価格では、8畳の床の張り替えが6万~12万円程度、トイレ本体と内装の改修が22万~36万円程度です。下地補修や配管工事が必要になると追加費用が発生します。複数社から見積もりを取り、工事項目ごとに比較しましょう。
Q.リノベーション後は家賃を上げられますか?
周辺相場を超えない範囲であれば、家賃を見直せる可能性があります。ただし、月5,000円上げても空室が1か月延びれば、増収分の多くが失われる場合があります。築年数や間取り、駅距離が近い物件と比較し、管理会社の査定を受けて決めましょう。
Q.建築確認が必要になる工事はありますか?
壁紙や床材の変更、水回り設備の交換だけであれば、通常は建築確認の対象になりません。一方、主要構造部の過半を改修する大規模工事は、2025年4月以降、建築確認が必要になる場合があります。間取りや構造を大きく変えるときは、工事前に建築士や自治体へ確認してください。
Q.原状回復とリノベーションの違いは何ですか?
原状回復は、借主の故意や過失などによる損傷を修復することが中心です。リノベーションは、設備や内装を変更し、物件の機能や価値を高める目的で行います。通常損耗まで借主へ請求できるとは限りません。退去精算費とオーナー負担の改修費は分けて記録しましょう。
まとめ

おしゃれなリノベーションは、築古物件の印象を変え、競合物件との差別化を図る方法です。
ただし、空室の原因が家賃や募集条件にある場合は、内装工事だけでは解決しない可能性があります。問い合わせ数や内見後の反応を確認し、入居者が求める設備や内装を整理しましょう。
見た目と使いやすさを組み合わせ、回収期間を確認して進めることが重要です。


