マンション管理組合の防災備蓄リスト|品目と必要数の決め方

マンション管理組合の防災備蓄リスト|品目と必要数の決め方

この記事の要点

  1. 管理組合は在宅避難を前提に備える
  2. 必要量は人数と日数の掛け算で決まる
  3. 費用は予算区分と総会承認で動かす

マンション管理組合の防災備蓄を任され、何から手をつけるか迷っていませんか。

品目をそろえる前に決めるべきは「必要量」と「費用の出し方」です。

この記事では、管理組合が備える備蓄品の一覧から、人数に応じた数量の出し方、総会での承認までを順に解説します。

南海トラフ地震への備えが求められる今、読み終えるころには、次の理事会で示せる計画の骨子が手に入ります。

管理組合がそろえる防災備蓄品と必要量の決め方

管理組合の備蓄は、住民が自宅で生活を続ける在宅避難を前提に考えます。

地震でライフラインが止まっても、新しい耐震基準を満たすマンションは住み続けられる場合が多いためです。

停電するとエレベーターが止まり、給水ポンプも動かなくなって断水が起こります。排水管が傷んでいれば、汚水の逆流を防ぐためにトイレも使えません。

内閣府も、こうした事態に備えて最低3日分、できれば1週間分の備蓄をすすめています。

まずは管理組合がそろえる品目を押さえ、次に建物の人数から必要量を割り出すところから始めましょう。

引用:政府広報オンライン「災害に備えた家庭備蓄のポイント」

管理組合が備える備蓄品の一覧

管理組合が備えるのは、各家庭ではそろえにくい共用の資機材です。

住民全員が一定期間しのげる飲料水や非常食に加え、復旧作業や救護のための道具をそろえます。

主な品目と用途を、次の表にまとめました。

品目 用途 備える目安
飲料水・非常食 在宅避難中の食事 居住者数×日数分
簡易トイレ 断水時の排せつ 1人1日5回前後
救急セット けが人の応急手当 複数人分
ヘルメット・工具 共用部の点検・復旧 作業する人数分
ラジオ・懐中電灯 情報収集・照明 予備電池とセット
発電機・蓄電池 通信機器の充電 共用部用に複数

飲料水と非常食は住民全員分が要りますが、工具や救急セットは作業にあたる人数分で足ります。

救急セットには止血帯や包帯、消毒液をそろえ、使用期限をこまめに確かめておきましょう。ラジオは停電でもニュースを拾えるよう、電池式か手回し式を選ぶと安心です。

発電機や蓄電池があれば、住民の安否確認に使う携帯電話やトランシーバーを充電できます。

ヘルメットを全戸分そろえる必要はなく、点検や復旧を担う理事や有志の人数分を確保しておくと安心です。

居住者数から必要量を計算する手順

必要量は、居住者数に1日の消費量と備える日数を掛けて求めます。 品目ごとの計算例を、50人が住むマンションで考えてみましょう。

  • 飲料水:1人1日3リットル×50人×3日=約450リットル(1週間分は約1,050リットル)
  • 簡易トイレ:1人1日5回×50人×3日=約750回分
  • 非常食:1人1日3食×50人×3日=約450食分

飲料水を1週間分そろえると、2リットルのペットボトルでは約530本を超える量になります。これだけの数になると、保管する場所の確保も同時に考えなければなりません。

この計算を品目ごとに行えば、感覚ではなく数字で過不足のない備蓄計画を立てられます。 算出した必要量を一覧にまとめておけば、総会で住民に説明するときの根拠になるでしょう。

備蓄品の費用と総会で承認を得る進め方

備蓄にかかる費用は、どの会計から出すかを先に決める必要があります。

管理組合のお金は、毎月の管理費と、将来の工事に積み立てる修繕積立金の2つです。 備蓄品は使うたびに減る消耗品に近く、扱い方をまちがえると規約に反するおそれもあります。

まとまった支出には住民の合意が必要です。出どころを曖昧にしたまま買いそろえると、あとから住民の反発を招きかねません。

ここでは、予算の出どころと、総会で承認を得るまでの流れをまとめます。

費用は管理費と修繕積立金のどちらから出すか

結論として、防災備蓄品は管理費から支出するのが基本です。

国土交通省のマンション標準管理規約では、修繕積立金の使いみちは計画的な修繕や不測の事故への対応に限られています。

備蓄品のように定期的に買い替える消耗品は、その対象になじみません。毎年の予算に防災費のわくを設けておけば、期限切れの入れ替えにも無理なく対応できます。

発電機や蓄電池など高額で長く使う設備は、扱いが異なります。これらは総会の決議があれば、修繕積立金や予備費を充てられることもあります。

金額が大きいほど住民の関心も高まるため、出どころの判断は慎重に進めましょう。

出典:国土交通省「マンション標準管理規約(複合用途型)」

理事会から総会へ承認を進める流れ

承認は、理事会での検討から総会での決議へと段階を踏みます。

あわてて総会に諮る前に、理事会で材料をそろえておくと話がまとまりやすくなります。

進め方の手順は次のとおりです。

  • 理事会で必要な品目と数量、概算費用をまとめる
  • 複数の業者から見積もりを取り、比較する
  • 予算案として総会の議案に加える
  • 総会で決議し、購入と保管を実行する

それぞれの段階で記録を残しておくと、次の代の理事へ引き継ぐときにも役立ちます。見積もりを複数そろえておけば、住民から費用の妥当性を問われても落ち着いて答えられるはずです。

こうして数字と手順を準備しておくことが、計画を前に進める近道になります。

よくある質問

備蓄品は何日分そろえればよいですか

最低3日分、できれば1週間分です。災害から3日間は人命救助が優先され、物資が届くまで時間がかかります。タワーマンションは給水やエレベーターの復旧が遅れやすいため、1週間分を目安にすると安心です。

備蓄の置き場所がない場合はどうしますか

共用部への分散保管が現実的です。防災備蓄倉庫がなくても、管理員室や空いている共用スペースに分けて置けます。住民全員に保管場所を知らせ、地震で散乱しても取り出せる状態にしておきましょう。

補助金は使えますか

自治体によっては使えます。マンションの防災備蓄や設備に補助金を設ける市区町村があります。金額や条件は地域で異なるため、お住まいの自治体の防災担当窓口に確認するのが確実です。

備蓄品の保管場所と入れ替えの管理

必要量を計算したあとに現実的な壁となるのが、保管場所の確保と使用期限の管理です。50人規模のマンションで1週間分の飲料水をそろえると2リットルボトルで約530本、容積にすると1立方メートルを超える量になります。

下表は、主な備蓄品の保管期限と入れ替えの考え方を整理したものです。製品によって期限は異なるため、購入時に実際の表示を確認してください。

品目保管期限の目安入れ替えの考え方
長期保存水5〜10年期限の1年前に発注し、防災訓練で配布
アルファ米・保存パン5〜7年同上。試食を兼ねると住民への周知にもなる
簡易トイレ(凝固剤)10〜15年期限が長く、優先度は低い
救急セット(消毒液・絆創膏)3〜5年年1回の点検で個別に補充
乾電池5〜10年ラジオ・懐中電灯とセットで年1回動作確認
発電機(燃料)燃料は6か月程度カセットボンベ式なら管理が容易
ヘルメット3〜5年(樹脂の劣化)直射日光を避けて保管する

保管場所は、集会室・防災倉庫・機械室の空きスペースなどが候補になります。注意したいのは、浸水想定区域内では地下や1階の倉庫が使えなくなる可能性がある点です。ハザードマップで浸水深を確認し、想定される深さより上の階に分散保管する構成が安全です。

また、エレベーターが停止すると上層階への運搬が困難になります。高層のマンションでは、中間階の共用部に一部を分散して置いておくと、停電時の運搬負担を減らせます。

備蓄計画を進める年間スケジュール

備蓄は総会での予算承認が前提になるため、逆算でスケジュールを組むと理事会の任期内に実行まで到達しやすくなります。多くの管理組合では通常総会が年1回のため、この時期から逆算します。

時期(総会からの逆算)実施すること
6か月前居住者数を確認し、品目と必要量を算出する
5か月前保管場所の候補を洗い出し、容積が収まるか確認する
4か月前複数業者から見積もりを取得する
3か月前理事会で案を決定し、予算区分(管理費か修繕積立金か)を整理する
2か月前自治体の助成金制度の申請要件と期限を確認する
1か月前議案書を作成し、住民へ事前配布する
総会後発注・納品。防災訓練で使用方法を周知する

予算区分については、備蓄品の購入は建物の修繕にあたらないため、一般的には管理費会計から支出するのが基本的な考え方とされています。修繕積立金からの支出を検討する場合は、管理規約の使途規定に適合するか確認が必要です。判断に迷う場合はマンション管理士に相談してください。

また、多くの自治体が管理組合向けに防災資機材の購入助成を設けています。助成率や上限額は自治体ごとに異なり、申請が年度単位で受付期間が限られることが多いため、総会の日程と申請期限が合うかを早い段階で確認しておくと、1年待ちを避けられます。

導入後に決めておきたい運用ルール

備蓄品は購入して終わりではなく、いざというときに取り出して使える状態を保つ運用が必要です。理事が毎年交代する管理組合では、引き継ぎの仕組みがないまま数年が経過し、期限切れに気づかないケースが起こりがちです。

  • 品目・数量・使用期限・保管場所を一覧表にまとめ、理事会で共有しているか
  • 年1回の点検日を決め、理事の引き継ぎ事項に組み込んでいるか
  • 防災倉庫の鍵の保管者と、災害時に誰が開けるかを複数名で決めてあるか
  • 発電機やエンジンカッターなど、使用に慣れが必要な機材の操作訓練を行っているか
  • 簡易トイレの使用方法と、使用後の汚物の保管場所を決めてあるか
  • 要配慮者(高齢者・障がいのある方・乳幼児のいる世帯)の把握方法を定めているか
  • 各家庭でも3日分から1週間分の備蓄を行うよう、住民へ継続的に周知しているか

特に見落とされやすいのが、簡易トイレの使用後の保管です。断水時はごみ収集も止まる可能性があり、数日分の汚物を屋外に一時保管する場所を事前に決めておかないと、衛生面での問題が生じます。ごみ集積所とは別に、直射日光を避けられる区画を候補として押さえておくと、発災後の判断が早くなります。

まとめ|数を決めてから備蓄は動き出す

管理組合の防災備蓄は、在宅避難を前提に、人数と日数から必要量を決めるところから始まります。

品目をそろえる前に数字を固めておけば、過不足のない計画になるはずです。費用は管理費からの支出を基本とし、高額な設備は総会の決議で対応します。

理事会で見積もりまで準備し、総会で承認を得る流れを踏めば、住民の納得も得やすくなります。備蓄は一度そろえて終わりではなく、期限を定期的に確認して入れ替える運用まで計画に入れておきたいところです。

まずは自分のマンションの居住者数を確認し、飲料水の必要量を計算するところから動き出してみてください。

著者

クラウド管理編集部

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