定期借家と普通借家の違いとは?メリット・デメリットや選び方を解説

定期借家と普通借家の違いとは?メリット・デメリットや選び方を解説

この記事の要点

  1. 定期借家は「更新なし・期間満了で退去」、普通借家は「更新あり・継続入居」が原則で、明け渡しのしやすさが大きく異なる
  2. 定期借家は運用の自由度が高い反面、家賃が相場より5〜20%下がる傾向があり、入居者募集に工夫が必要
  3. 建て替え・売却予定があるなら定期借家、安定した長期経営を重視するなら普通借家が適している

「定期借家と普通借家の違いがよくわからない」「所有している物件はどちらの契約形態が向いているのだろう?」——賃貸経営を行うオーナーや、これから不動産投資を始める方のなかには、このような疑問を持つ方も多いでしょう。

定期借家契約と普通借家契約は、契約期間・更新の有無・明け渡しのしやすさ・家賃水準などに明確な違いがあります。どちらを選ぶかによって、空室リスクや将来の売却・建て替え計画、さらには毎月の収益にまで影響を与えます。

この記事では、定期借家と普通借家の違いを比較表で整理しながら、それぞれのメリット・デメリット、向いているケース、契約締結時の注意点までを実務的に解説します。物件運営に適した契約形態を選ぶための参考にしてください。

定期借家と普通借家の違いを比較表で解説

定期借家契約と普通借家契約は、どちらも借地借家法に基づく賃貸借契約ですが、契約期間満了後の扱いや更新の有無などに大きな違いがあります。特にオーナーにとっては、将来的な売却や建て替えの予定、長期的な賃貸経営方針によって適した契約形態が異なります。

まずは両者の違いを一覧表で確認しておきましょう。

項目 定期借家契約 普通借家契約
契約更新 なし(期間満了で終了) あり(原則更新される)
契約期間 1年未満でも設定可能 1年以上(1年未満は期間の定めなし扱い)
契約終了後 原則退去 更新して継続
再契約 双方合意で可能 不要(自動更新等)
契約方法 書面(公正証書等)+事前説明が必須 口頭でも成立(書面が一般的)
中途解約 原則不可(特約で可能)※床面積200㎡未満の居住用は例外規定あり 借主から解約可(特約による)
家賃の目安 相場より5〜20%程度低くなる傾向 相場どおりに設定しやすい
明け渡し 期間満了で計画的に可能 正当事由+立退料が必要な場合が多い
運用の自由度 高い 比較的低い

更新の有無

定期借家契約と普通借家契約の最も大きな違いは、契約更新の有無です。普通借家契約は更新を前提とした契約であり、借主が継続を希望する場合は10年・20年と長期間入居するケースも少なくありません。一方、定期借家契約は契約期間満了によって契約が終了するため、オーナーは「何年後にこの部屋が空く」という前提で将来の計画を立てやすい特徴があります。

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契約期間満了後の扱い

普通借家契約では契約更新によって入居が継続されるのが一般的です。一方、定期借家契約では契約期間が終了すると借主は退去することになります。ただし、双方が合意した場合には「再契約」を締結することも可能です。再契約は法律上の「更新」とは異なり、改めて新規契約を結ぶ扱いになるため、家賃や条件を見直すチャンスにもなります。

中途解約の扱い

普通借家契約では、借主からの中途解約は特約で認められているのが通常で、1〜2か月前の予告で解約できます。定期借家契約では、原則として契約期間中の中途解約はできません。ただし、居住用かつ床面積200㎡未満の物件で、転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情がある場合は、借主からの中途解約が法律上認められています(借地借家法第38条)。オーナー側から解約したい場合は、その旨を特約に明記しておく必要があります。

家賃設定の違い

定期借家契約は更新がなく入居者にとって「いつか退去しなければならない」というデメリットがあるため、同条件の普通借家契約よりも家賃を5〜20%程度低く設定する必要があるケースが多いのが実情です。一方、普通借家契約は相場どおりの家賃を設定しやすく、入居者募集もスムーズに進みやすい傾向があります。短期での収益最大化を狙うなら普通借家、計画的な明け渡しを優先するなら定期借家、という判断軸になります。

オーナーの運用自由度

定期借家契約は期間満了で確実に物件を返してもらえるため、建て替え・大規模リノベーション・売却などの計画を立てやすく、運用の自由度が高いのが特徴です。普通借家契約では、オーナー都合での退去には「正当事由」と多くの場合「立退料」が必要となり、運用の自由度はやや制限されます。

そもそも定期借家・普通借家とは?基礎知識を整理

普通借家契約とは

普通借家契約とは、契約期間が満了しても借主が希望すれば原則として契約が更新される、最も一般的な賃貸借契約です。借地借家法によって借主が手厚く保護されており、オーナー側から更新を拒絶するには「正当事由」が必要です。日本の賃貸住宅の大半はこの普通借家契約で運用されています。

定期借家契約とは

定期借家契約とは、2000年3月施行の「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」によって導入された、契約期間の満了によって更新されずに終了する賃貸借契約です。あらかじめ定めた期間で確実に契約が終了するため、オーナーは将来の物件活用を計画しやすくなります。締結には書面による契約と、「更新がない契約である」旨を記載した書面の事前交付・説明が法律上義務付けられています。

オーナーが定期借家契約を選ぶメリット・デメリット

メリット:契約期間終了後の運用計画を立てやすい

定期借家契約の最大のメリットは、契約期間満了で確実に物件が返ってくることです。具体的には次のような利点があります。

  • 建て替え・売却の計画が立てやすい:3年後・5年後に確実に明け渡しを受けられるため、立退交渉や立退料が不要
  • 問題のある入居者を契約満了で退去させやすい:家賃滞納や近隣トラブルの常習者でも、期間満了で再契約しないことができる
  • 転勤者の自宅を一時的に貸せる:マイホームを期間限定で貸し出し、帰任時に確実に取り戻せる(リロケーション)
  • 家賃の見直しがしやすい:再契約時に相場に合わせて条件を更新できる

デメリット:入居者募集や契約管理に影響する場合がある

  • 入居者が集まりにくい:「いつか退去しなければならない」ため敬遠されやすく、空室期間が長引くリスクがある
  • 家賃を相場より下げる必要がある:前述のとおり5〜20%程度の値下げが必要になることも
  • 手続きが厳格:書面契約・事前説明が必須で、不備があると普通借家契約とみなされるリスクがある
  • 再契約のたびに事務負担が発生:更新ではなく新規契約扱いのため、手間がかかる

オーナーが普通借家契約を選ぶメリット・デメリット

メリット:長期的に安定した賃貸経営を行いやすい

  • 入居者を集めやすい:一般的な契約形態のため借主に安心感があり、募集がスムーズ
  • 相場どおりの家賃を設定できる:値下げの必要がなく、収益を最大化しやすい
  • 長期入居による安定収入:良質な入居者が長く住むことで、空室リスクと原状回復コストを抑えられる
  • 契約手続きがシンプル:定期借家のような厳格な書面要件がない

デメリット:オーナーの都合で契約を終了しにくい

  • 退去させるのが難しい:オーナー都合で更新拒絶するには「正当事由」が必要で、ハードルが高い
  • 立退料が発生することがある:建て替え等で退去を求める場合、家賃の数か月〜十数か月分の立退料を求められるケースがある
  • 家賃の値上げがしにくい:借主の同意が必要で、一方的な値上げは難しい
  • トラブル入居者でも契約終了が困難:明確な契約違反がない限り退去を求めにくい

定期借家と普通借家のどちらを選ぶべき?

どちらの契約形態が適しているかは、物件の運用方針や将来計画によって異なります。以下の判断軸を参考にしてください。

普通借家契約が向いているケース

  • 長期的に安定した家賃収入を得たい
  • 当面、売却や建て替えの予定がない
  • 空室リスクをできるだけ抑え、相場どおりの家賃で運用したい
  • 一般的なファミリー向け・単身向けの賃貸経営を行っている

定期借家契約が向いているケース

  • 数年後に建て替え・大規模修繕・売却を予定している
  • 転勤などで一時的に自宅を貸し出したい(リロケーション)
  • トラブル入居者のリスクを抑えたい
  • 定期的に家賃や入居者を見直しながら運用したい

定期借家契約を結ぶ際の注意点と手続きの流れ

定期借家契約は、手続きを誤ると「普通借家契約」とみなされてしまうリスクがあります。以下の手順と注意点を必ず押さえましょう。

  • 事前説明書の交付・説明:契約締結前に「更新がなく、期間満了で契約が終了する」旨を記載した書面を交付し、口頭で説明する(電子書面も可)
  • 書面による契約

書面による契約:定期借家契約は必ず書面(または電磁的記録)で締結する必要がある。口頭のみの契約は認められない

  • 契約期間の明記:契約期間を明確に定める。1年未満の契約も可能だが、その場合は「期間満了による終了」の通知が不要となる点に注意
  • 終了通知の送付:契約期間が1年以上の場合、期間満了の1年前から6か月前までの間に、借主へ契約終了の通知を行う必要がある
  • 再契約の検討:引き続き貸したい場合は、期間満了時に改めて再契約を結ぶことで継続が可能

特に注意したいのが「事前説明書の交付・説明」です。この手続きを怠ると、定期借家契約として成立せず、普通借家契約として扱われてしまいます。その結果、期間満了で退去させることができなくなるため、必ず契約書とは別に説明書面を用意しましょう。

また、終了通知を期限内に行わなかった場合、契約終了を借主に対抗できなくなります。通知時期を管理し、忘れずに対応することが重要です。手続きに不安がある場合は、不動産管理会社や専門家へ相談することをおすすめします。

定期借家と普通借家に関するよくある質問

ここでは、定期借家と普通借家に関して多く寄せられる質問にお答えします。契約を検討する前にぜひ確認しておきましょう。

定期借家契約は途中で解約できますか?

原則として、定期借家契約は契約期間中の中途解約はできません。ただし、床面積200㎡未満の居住用建物で、転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情がある場合は、借主から中途解約を申し入れることが認められています。また、契約書に中途解約に関する特約を設けておけば、その条件に従って解約することも可能です。トラブルを避けるためにも、契約時に中途解約の取り扱いを明確にしておきましょう。

定期借家契約は普通借家契約より家賃が安くなるのですか?

一般的に、定期借家契約は更新がなく入居者にとって不安定な側面があるため、相場よりも家賃を低めに設定されるケースが見られます。特に短期間の契約では、家賃を抑えないと入居者が見つかりにくい傾向があります。ただし、立地や物件の魅力が高ければ相場どおりの家賃で貸し出せることもあります。家賃設定は物件の条件や周辺相場を踏まえて慎重に判断しましょう。

契約期間が満了した後、同じ入居者に貸し続けることはできますか?

はい、可能です。定期借家契約には「更新」という概念はありませんが、貸主・借主双方の合意があれば「再契約」を結ぶことで、引き続き同じ入居者に貸し続けられます。再契約の際は、改めて事前説明書の交付・説明や書面による契約締結が必要になる点に注意してください。良好な入居者であれば、再契約によって安定した賃貸経営を続けることもできます。

普通借家契約で入居者に退去してもらうことはできますか?

普通借家契約では、借主が法律で手厚く保護されているため、貸主の都合だけで退去させることは困難です。退去を求めるには「正当事由」が必要であり、建て替えの必要性や貸主自身の使用目的などが認められなければなりません。さらに、立ち退き料の支払いを求められるケースも多くあります。将来的に退去を想定している場合は、定期借家契約の利用を検討するとよいでしょう。

定期借家契約で必要になる書類と法定の通知期限

定期借家契約は、手続きに一つでも不備があると普通借家契約とみなされる可能性がある点が最大の実務リスクです。借地借家法38条は、契約書とは別個の書面による事前説明を求めており、この説明を怠った場合は「契約の更新がないこととする定め」が無効になると規定されています。

手続きタイミング根拠・注意点
事前説明書の交付・説明契約締結前(同日でも契約書より先)借地借家法38条。契約書と別紙にする必要がある
契約書の作成締結時書面(電磁的記録も可)。公正証書が推奨されるが必須ではない
終了通知期間満了の1年前から6か月前までの間契約期間が1年以上の場合に必要(同法38条)
再契約の交渉満了の6〜12か月前終了通知と並行して条件を提示するのが実務的

特に見落とされやすいのが終了通知の期限です。契約期間が1年以上の定期借家契約では、期間満了の1年前から6か月前までに終了を通知しなければ、その終了を借主に対抗できません。通知が遅れた場合でも、通知日から6か月経過後には終了を主張できるとされていますが、その分明け渡しが後ろ倒しになります。建て替えや売却のスケジュールが決まっている場合は、逆算して通知日をカレンダーに登録しておくことをおすすめします。

なお、契約期間が1年未満の定期借家契約では、この終了通知は不要とされています。ただし実務上は、トラブル防止のため書面で満了予定を伝えておくほうが安全です。

明け渡しにかかるコストの比較

契約形態の選択は、将来の明け渡し局面でコスト差として表面化します。普通借家契約で借主に退去を求める場合、借地借家法28条の「正当の事由」が必要とされ、その判断要素の一つとして立退料の提供が考慮されます。

項目定期借家契約普通借家契約
明け渡しの根拠期間満了(正当事由不要)正当事由が必要
立退料原則不要居住用で家賃の6〜12か月分程度が一つの目安
交渉期間通知から6か月程度半年〜数年に及ぶこともある
家賃水準相場より5〜20%低くなる傾向相場どおり

立退料の金額に法定の基準はなく、賃料水準・入居年数・借主の使用状況・代替物件の確保しやすさなどを総合して個別に決まります。上記はあくまで交渉の相場感であり、店舗など事業用ではさらに高額になる例もあります。実際の金額や正当事由の有無は事案ごとに判断が分かれるため、弁護士に相談してください。

定期借家は家賃が下がる分、月々の収入は目減りします。ただし、5年後の建て替えが確定しているようなケースでは、家賃の下落分より立退料と交渉期間の回避効果のほうが大きくなる場合があります。「年間の家賃減少額×予定保有年数」と「想定立退料」を並べて比較すると、判断の軸が定まります。

契約締結前の実務チェックリスト

  • 事前説明書を契約書とは別の書面として用意し、署名・押印を得たか
  • 事前説明の日付が、契約書の締結日と同日または前日以前になっているか
  • 契約書に「更新がなく、期間満了により終了する」旨を明記したか
  • 終了通知の送付予定日(満了の6〜12か月前)を管理会社と共有したか
  • 床面積200㎡未満の居住用で、転勤・療養等による中途解約規定を説明したか
  • 募集図面に「定期借家・○年○か月」と期間を明示し、再契約の可否を記載したか

まとめ

定期借家と普通借家は、いずれも賃貸借契約の形態ですが、契約の更新や退去のしやすさといった点で大きく異なります。普通借家契約は長期的に安定した家賃収入を得たい場合に向いており、入居者を確保しやすいというメリットがあります。一方、定期借家契約は契約期間が満了すれば確実に契約を終了できるため、建て替えや売却、転勤による一時的な貸し出しなど、将来の計画が明確な場合に適しています。

どちらを選ぶべきかは、物件の運用方針や将来の活用計画によって変わります。安定した賃貸経営を重視するなら普通借家契約、柔軟な物件活用やリスク管理を重視するなら定期借家契約というように、目的に合わせて選択することが大切です。

特に定期借家契約は、事前説明書の交付や終了通知など、所定の手続きを正しく行わなければ普通借家契約とみなされるリスクがあります。手続きに不安がある場合は、不動産管理会社や専門家へ相談しながら進めると安心です。それぞれの特徴を正しく理解し、自分の状況に合った契約形態を選んで、納得のいく賃貸経営を実現しましょう。

著者

クラウド管理編集部

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