この記事の要点
- 人物を見分けられる防犯カメラ映像は個人情報にあたり、管理組合は本人の同意なく住民や第三者に見せられない
- 警察の捜査関係事項照会や弁護士会照会など法令に基づく求めなら、管理組合は同意なしで映像を開示できる
- 保存期間を1か月以内などと運用細則で決め、閲覧の相手と日時を記録すると開示をめぐる揉め事を防げる
「自転車にいたずらされたから、防犯カメラの映像を見せてほしいと言われたけど…」
「理事長なら、防犯カメラの映像を自由に確認してもいいのかな?」
防犯カメラの映像をどこまで見せてよいのか、判断に迷う理事の方は多いでしょう。設置したときに閲覧のルールを決めておらず、住民に頼まれてから慌てる管理組合も少なくありません。断れば不満が出て、見せればほかの住民のプライバシーを侵すおそれが生じるでしょう。
個人情報保護法は映像を開示できる場面を限っており、法令に沿って判断すれば住民とのトラブルは避けられます。
開示できる場面と手順を運用細則にまとめておけば、理事が交代しても対応はぶれないでしょう。
本記事では、映像を開示できるケースと住民から頼まれたときの対応に加え、保存期間と運用細則の決め方を紹介します。
住民から映像を求められても、根拠を示して落ち着いて答えられるでしょう。
マンション管理の防犯カメラ映像は開示できる?

防犯カメラの映像は、法令に基づく求めや本人の同意がある場合に限って開示できます。人物を見分けられる映像は個人情報にあたり、個人情報保護法の対象になるためです。
開示するかどうかは、映像を管理する管理組合が理事会で判断します。
防犯カメラの映像は個人情報にあたる
個人情報とは、氏名や顔の映像など、特定の個人を見分けられる情報のことです。エントランスやエレベーターで顔が映った録画は、個人情報保護法2条1項の個人情報にあたります。
平成29年5月施行の改正法で、小規模な管理組合も法律の対象になりました。個人情報保護法27条1項では、日時などで検索できる録画を、本人の同意なく第三者へ渡すことを原則禁じています。
開示するか決めるのは管理組合
防犯カメラを設置して映像を管理するのは、共用部分を管理する管理組合です。委託を受けて機器を扱う管理会社も、開示を独断では決められません。
私的な興味で映像を見る権限は、理事長にもない点に注意が必要です。閲覧させるかどうかは、設置目的の範囲で運用細則の手順に沿い理事会が判断します。
防犯カメラ映像を開示できる3つのケース

映像を開示できるのは、法令か本人の意思に基づく次の3つです。
いずれの場合も、管理組合は口頭ではなく書面で求めを受けましょう。
- 警察:捜査関係事項照会書による求め
- 弁護士会・裁判所:弁護士会照会や調査嘱託による求め
- 本人:映っている本人からの開示請求
警察と弁護士会・裁判所への開示は第三者に渡す扱いで、本人への開示とは異なります。
警察から捜査関係事項照会があった場合
捜査関係事項照会とは、刑事訴訟法197条2項に基づいて警察が団体などに情報を求める手続きのことです。法令に基づく求めのため、管理組合は本人の同意がなくても映像を渡せます。
警察官が口頭で映像を求めてきたときは、照会書を書面で出してもらいましょう。
弁護士会照会や裁判所から求められた場合
弁護士会照会とは、弁護士法23条の2に基づき弁護士会を通じて情報を求める手続きのことです。民事訴訟法186条の調査嘱託など、裁判所からの求めも法令に基づく場合にあたります。
民事の争いで弁護士個人から直接頼まれても、応じる義務はありません。弁護士会や裁判所を通した書面の求めかどうかを確かめてから、理事会で判断しましょう。
映っている本人が開示を求めた場合
防犯カメラに映っている本人は、個人情報保護法33条に基づき自分の映像の開示を請求できます。理事会は、映っているのが請求者本人かを確かめてから可否を決めましょう。
ほかの住民が映っているとき、管理組合はその人の権利を害するおそれを理由に開示を断れます。開示する場合も、ほかの人の顔にぼかしを入れるなどの配慮が欠かせません。
住民から映像を見せてと頼まれたときの対応

住民から映像を見せてほしいと頼まれたら、依頼の内容で対応を分け、犯罪なら警察への相談を案内します。
やむを得ず見せる場合は、立ち会いと身元確認が条件です。
依頼の内容ごとに対応を分ける
盗難やいたずらは犯罪のため、被害を受けた住民に案内するのは警察への届け出です。
依頼の内容ごとの対応を次の表にまとめました。
| 依頼の内容 | 管理組合の対応 |
| 自転車の盗難やいたずら | 警察への届け出を案内する |
| ゴミ出しのルール違反 | 理事会が確認し掲示で注意する |
| 落とし物の確認 | 本人の同意を得て理事が確認する |
| 近隣住民とのもめごと | 弁護士会照会などの手続きを待つ |
ゴミ出しの違反者を映像で特定して公表すると、目的外の利用と受け取られかねません。
閲覧させるなら立ち会いと身元確認を行う
事情があって住民に映像を見せる場合も、理事会の承認を得てから行います。
閲覧の場では、次の4点を守りましょう。
- 承認:理事会で閲覧の必要性を確認する
- 身元確認:依頼した住民の本人確認を行う
- 立ち会い:理事や管理会社の担当者が同席する
- 複製の禁止:映像の撮影やコピーを認めない
映像データは渡さず、画面で見せるだけの運用が安全です。
防犯カメラ映像の保存期間と閲覧記録

防犯カメラ映像の保存期間は、都道府県のガイドラインで概ね1か月以内が目安です。
誰がいつ見たかを記録すれば、開示の判断を後から説明できます。
保存期間は概ね1か月以内が目安
防犯カメラの扱い方の目安は、多くの都道府県がガイドラインにまとめています。たとえば香川県の場合、画像を残す期間は概ね1か月以内です。
長く保存するほど、外部へ漏れるおそれが増えるとされています。保存期間を過ぎた映像は、上書きなどで確実に消すよう求める内容です。
捜査で必要なときは、理事会の判断で延ばせるよう決めておきましょう。
参照:香川県「防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン」
閲覧・開示した記録を残す
映像を見せたり渡したりした際は、相手先と日時・目的・映像の内容を記録します。住民から問い合わせを受けても、記録簿があれば開示の経緯を示せるでしょう。
依頼した人の身分証明書で確かめた身元も、一緒に書き残します。記録簿の様式を細則の別紙にしておけば、理事が交代しても迷いません。
防犯カメラ運用細則で決めておくこと

防犯カメラ運用細則とは、カメラの設置目的や映像の扱い方を管理組合で定めたルールのことです。
総会で決めた細則があれば、開示を断る場面でも住民に根拠を示せます。
運用細則に入れる5つの項目
運用細則には、映像の開示をめぐって揉めやすい点を次の5項目で書き込みます。
- 設置目的:犯罪の防止など撮影の目的
- 管理責任者:映像を管理する理事長や担当理事
- 保存期間:1か月以内など具体的な日数
- 閲覧と開示:見られる人と開示できる場面
- 記録:閲覧や開示をした内容の残し方
カメラ付近に作動中と表示する決まりも、細則に書いておきましょう。
運用細則は総会の普通決議で定める
国土交通省のマンション標準管理規約48条では、使用細則などの制定を総会で決める事項としています。議決権総数の半数以上を持つ組合員が出席し、その議決権の過半数が賛成すれば成立です。
理事会は、標準管理規約54条にもとづいて細則の案を決め、総会に出します。同じ規約のコメントによると、防犯カメラの設置工事も普通決議で実施できる扱いです。
参照:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)新旧対照表(令和6年6月7日改正)」
よくある質問
理事長は防犯カメラの映像を自由に見られますか?
警察に映像を渡すときに住民の同意は必要ですか?
保存期間を過ぎた映像は見せてもらえますか?
まとめ|防犯カメラ映像の開示ルールを細則で決めましょう

防犯カメラの映像は個人情報にあたり、法令に基づく求めや本人の請求がある場合に限って開示できます。
管理規約や使用細則に、防犯カメラの保存期間と閲覧のルールがあるか確認してみましょう。ルールがなければ、開示の手順をまとめた運用細則の案を理事会で作り、総会の議題にします。
ルールを決めておけば、住民から映像を求められても根拠を示して落ち着いた対応が取れるでしょう。


