この記事の要点
- ローン完済後は月々の返済額がそのまま手取りに加わるが、利息を経費にできず所得税と住民税は増える
- 管理費・修繕積立金・固定資産税は完済後も毎年かかり、修繕積立金の平均は令和5年度に月13,054円まで上がった
- 完済後の選択肢は保有・売却・自己居住の3つで、築年数と家賃の見通しから60代前に方針を決めておきたい
「ローンを返し終わったら、家賃はまるごと自分の収入になるの?」
「完済したあとも持ち続けるべきか、売るべきか決められない…」
ワンルームマンション投資では、35年前後のローンを組んで老後に完済する計画が多く見られます。完済が近づき、手取りや税金がどう変わるのかを知りたい方は少なくありません。
完済後は返済がなくなる代わりに、経費にできる利息も消えます。管理費や修繕積立金は上がる場合が多く、家賃がそのまま手元に残るわけではありません。
完済前から収支と売り時を見通しておけば、家賃収入を年金の上乗せとして長く受け取れます。
本記事では、完済後の収支と費用の変化に加え、保有・売却・自己居住の選び方も紹介します。
完済の時期に慌てず、物件を残すか現金に換えるかを落ち着いて選べるでしょう。
マンション投資のローン完済後に収支はどう変わる?

ローン完済後は、毎月の返済額がそのまま手取りの家賃収入に加わります。
ローン完済とは、金融機関から借りた元金と利息をすべて返し終えた状態のことです。返済が終わると、登記の手続きも必要になります。
返済額がそのまま手取りに加わる
完済後の手取りは「家賃-管理費・修繕積立金-税金」で決まります。返済に回していた分が、毎月の収入として残るでしょう。
たとえば家賃8万円で月の返済が6万円なら、完済後の手取りは6万円増えます。この試算は管理費や税金の増減を含まない単純な比較です。
抵当権を抹消する手続きが必要になる
抵当権とは、返済が滞ったときに金融機関が物件を売って回収できる権利のことです。完済しても登記は自動で消えないため、自分で抹消の登記を申請します。
完済後には、金融機関から抹消用の書類が届くのが通常です。法務局へ申請すれば、売却や相続で手間が増えるのを防げるでしょう。
ローン完済後もかかる費用と税金

ローン完済後も、管理費・修繕積立金・固定資産税は毎年かかり続けます。
経費とは、家賃収入を得るためにかかった費用で、収入から差し引けるもののことです。完済後は経費にできる項目が減り、税負担が重くなります。
修繕積立金は年々上がっている
修繕積立金とは、外壁や屋上の大規模修繕に備えて所有者が毎月積み立てる費用のことです。国土交通省の調査では、1戸の月額平均は令和5年度に13,054円でした。
平成30年度の11,243円から、5年で約1,800円上がっています。完済後の収支は、今の額ではなく値上げ後の額で見積もりましょう。
参照:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」
利息が経費から外れて税金が増える
ローン返済中は、利息の部分を不動産所得の経費として差し引けます。完済すると利息の計上がなくなり、課税される所得が増える仕組みです。
減価償却費も、償却が終われば計上できません。完済後の税額は、確定申告の数字をもとに税理士へ確認しておくと安心でしょう。
固定資産税は所有している限りかかる
固定資産税とは、毎年1月1日時点で土地や建物を持つ人にかかる市町村の税金のことです。総務省によると、標準税率は評価額の1.4%と定められています。
固定資産税は、ローンの有無にかかわらず毎年納める税金です。都市計画税がかかる地域では、その分も収支に含めて考えましょう。
完済後は保有・売却・自己居住のどれを選ぶ?

完済後の物件の使い道は、保有・売却・自己居住の3つです。違いを次の表にまとめました。
| 方法 | 得られるもの | 主な注意点 |
| 保有して貸す | 毎月の家賃収入 | 空室と修繕費の負担 |
| 売却する | まとまった現金 | 譲渡所得税と仲介手数料 |
| 自分や家族が住む | 家賃のかからない住まい | 家賃収入がなくなる |
どれを選ぶかは、老後に毎月の収入と手元の現金のどちらが必要かで決まります。
保有して家賃収入を受け取る
保有を続ければ、完済後の家賃収入を年金の上乗せとして毎月受け取れます。入居者が集まりやすい駅近の物件なら、長く貸し続けられるでしょう。
家賃は築年数とともに下がりやすいため、収支は5年ごとに見直しましょう。空室が続く場合は、売却への切り替えも選択肢に入ります。
売却して現金に換える
売却すれば、完済済みの物件がまとまった現金に変わるでしょう。国税庁によると、所有期間が5年を超える物件の売却益には所得税15%と住民税5%がかかります。
所有期間は、売った年の1月1日時点で数える決まりです。所得税には、復興特別所得税として2.1%分も加わります。
売却益は、売った価格から取得費と仲介手数料などを引いた金額です。
自分や家族が住む
完済した物件に住めば、住居費は管理費と修繕積立金で済みます。単身向けのワンルームは、子どもの一人暮らしや老後の住み替え先にも使えるでしょう。
入居者がいる間は、オーナーの都合で退去を求めるのは簡単ではありません。住む予定があるなら、契約の更新時期から逆算して準備を進めましょう。
ローン完済後の物件で注意したいリスク

完済後の物件で気をつけたいのは、建物が古くなって価値が下がる点です。
老朽化とは、年数がたって建物や設備が傷み、使い勝手や価値が下がることです。
築年数とともに家賃と価格が下がる
築年数が進むと、新しい物件と比べられて家賃や売却価格が下がりやすくなります。国土交通省の推計では、築40年以上のマンションは2025年末で約158.8万戸でした。
20年後には約3.2倍に増える見込みで、古い物件ほど選ばれにくくなる傾向があります。売るなら、築年数が浅いうちの方が高値を狙いやすいでしょう。
空室と設備交換の費用がかかる
完済後も、入居者が退去すれば次が決まるまで家賃は入りません。給湯器やエアコンの交換も、オーナーの負担です。
空室中でも、管理費と修繕積立金の支払いは止まりません。家賃の数か月分を予備費として残しておけば、急な出費にも対応できるでしょう。
ローン完済を早める繰り上げ返済はすべき?

繰り上げ返済は、手元資金を十分に残せる場合に限って検討する価値があります。
繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別に元金の一部や全額を前倒しで返すことです。利息は減りますが、手元の現金も減ります。
期間短縮型と返済額軽減型の違い
繰り上げ返済には、得られる効果が違う2つの型があります。
- 期間短縮型:毎月の返済額はそのままで、完済の時期が早まる
- 返済額軽減型:完済の時期はそのままで、毎月の返済額が減る
利息を多く減らせるのは期間短縮型で、毎月の収支を楽にしたいなら返済額軽減型が合うでしょう。
手元資金を残してから判断する
繰り上げ返済で現金を使いすぎると、空室や修繕の急な出費に対応できません。返済中は死亡時などに残債が弁済される団体信用生命保険の保障もあるため、急いで完済しなくてよいケースもあります。
手数料がかかる金融機関もあるため、事前に条件を確認しておきましょう。返済後も予備費を残せる範囲で金額を決めると安心です。
よくある質問
ローン完済後の家賃収入にも確定申告は必要ですか?
ローン完済後の抵当権抹消は自分でできますか?
ローン完済後の投資マンションは売るべきですか?
まとめ|完済前に収支と出口を見直してみましょう

ローン完済後は返済がなくなる反面、利息を経費にできず税金は増えます。管理費・修繕積立金・固定資産税も、物件を持つ限りかかる費用です。
完済の5年ほど前から、値上げ後の費用と税金を入れた収支を試算してみましょう。保有・売却・自己居住を比べると、選ぶ方向が見えてきます。
前もって方針を決めておけば、完済後の家賃収入を老後の生活に長く役立てられるでしょう。


