この記事の要点
- 全国の空き家は900万戸・空き家率13.8%と過去最高で、その半数以上を集合住宅が占めている
- 空き家で管理費や修繕積立金の滞納が続くと、修繕が滞ってマンションがスラム化し資産価値が下がる
- 管理組合は名簿整備と滞納の早期対応、所有者は賃貸・売却・空き家管理サービスの検討を早めに始めるのが有効
「相続したマンションが空き家のまま、資産価値が下がっていないか気になる…」
「管理費だけ払い続けているが、この先どうなるのだろう?」
分譲マンションを持つ方から、こうした声をよく耳にします。
空き家は戸建てだけの問題ではありません。総務省の調査では空き家が900万戸に達し、その半数以上を集合住宅が占めています。管理の手が届かない住戸が増えれば、建物の劣化や管理費不足を招きかねません。
空き家増加は避けにくい流れですが、早めに実態を知って手を打てば、資産価値の下落は防げます。管理組合と所有者が役割を分けて動けば、建物が荒れて管理が立ち行かなくなる事態も避けられます。
本記事では、マンションで空き家が増える背景と、管理費滞納や老朽化といった問題を整理しました。管理組合と区分所有者が取れる対策も取り上げます。
読み終えるころには、所有するマンションを守るために今できることが見えてくるでしょう。
マンション管理で見過ごせない空き家増加の実態

空き家は戸建て特有の問題と思われがちですが、実際にはマンションでも増え続けています。
分譲マンションの空き家は管理組合と所有者全員に影響します。
全国の空き家率と最新の統計
総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は900万戸に達しました。空き家率は13.8%で、過去最高を更新しています。
このうち集合住宅が占める割合は大きく、マンションの空き家は全国的な課題になりつつあります。5年ごとの調査で増加が続いており、今後も増える見込みです。
参照:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査住宅数概数集計結果」
マンションで空き家が増える理由
マンションで空き家が増える背景には、いくつかの要因が重なっています。主な理由は次のとおりです。
- 所有者の高齢化と、施設入居にともなう住み替え
- 相続したものの、遠方に住んでいて活用できないケース
- 築年数が古く、借り手や買い手が付きにくいこと
相続をきっかけに、使い道が決まらないまま空き家化する例が目立ちます。
空き家増加がマンション管理に及ぼす3つの問題

空き家が増えたマンションでは、財務・建物・運営の3つの面で問題が生じます。どの問題も一室だけでは収まらず、住民全体の負担になります。
管理費・修繕積立金の滞納
影響が大きいのは、管理費と修繕積立金の滞納です。国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、3か月以上滞納する住戸があるマンションは30.1%にのぼりました。
空き家では所有者と連絡が取れず、滞納が長期化しやすい傾向があります。
滞納が積み重なると修繕積立金が計画どおりに集まらず、必要な工事を先送りせざるを得なくなります。
参照:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果について」
建物と設備の急速な劣化
人が住まない住戸は、想像以上の速さで傷みます。換気や通水が止まると、配管の封水が蒸発し、下水の臭気が上下階へ広がることがあります。
湿気がこもってカビや結露が進み、漏水に気づくのも遅れがちです。発見が遅れるほど修繕の範囲は広がり、費用も膨らみます。
所有者不明化と合意形成の停滞
空き家が増えると、所有者が分からない住戸が生まれます。相続登記がされないまま放置されたり、相続が放棄されたりするためです。
マンションの大規模修繕や建替えには、区分所有者の一定割合の賛成が必要です。所有者不明の住戸があると賛否を確認できず、合意形成が進まないまま老朽化が進みます。
管理費滞納が招くマンションスラム化のリスク

管理費や修繕積立金の滞納が続くと、マンションはスラム化へ向かいます。
スラム化とは、管理不全で建物が荒れ、住環境と資産価値がともに低下した状態です。
修繕積立金不足と資産価値の低下
修繕積立金が不足すると、計画していた大規模修繕を実施できません。外壁補修や防水工事が先送りされ、雨漏りやタイル剥落の危険が高まります。
滞納・空き家・価値低下が連鎖すると、市場での評価も下がり、抜け出すのは容易ではありません。
限界マンション化のサイン
築年数が古いほどリスクは高まります。国土交通省の推計では、築40年超のマンションは2022年末の125.7万戸から、20年後には445万戸へと約3.5倍に増える見込みです。
総会が開けない、役員の担い手がいない、修繕積立金がほぼ底をついている。こうした兆候は限界マンション化のサインで、早い段階で専門家へ相談することが分かれ道になります。
空き家増加に管理組合ができる対策

空き家が増えても、管理組合の備え次第で管理不全は防げます。取り組みたいのは、所有者把握・滞納対応・ルール整備の3点です。
居住者・所有者名簿の整備
最初に取り組みたいのが、居住者名簿と組合員名簿の整備です。連絡先を平時から更新しておけば、空き家化しても所有者と連絡が取れます。
名簿に記載しておきたい主な項目は次のとおりです。
- 区分所有者の氏名・現住所・連絡先
- 賃貸中なら入居者と管理会社の情報
- 相続や売却があった際の変更届の提出先
名簿が整っていれば、所有者不明化を早い段階で防げます。
滞納への早期対応
滞納は初期対応の速さが決め手になります。修繕積立金の負担は年々重くなっており、放置するほど回収が難しくなります。
督促の時期や方法をあらかじめ管理規約で定めておくと、対応が遅れません。滞納が続く場合は、区分所有法にもとづく法的措置も選択肢になります。
管理規約の見直しと制度活用
古い管理規約のままでは、空き家時代の課題に対応しきれません。標準管理規約を参考に、名簿提出の義務化や遅延損害金の定めを盛り込むと実効性が高まります。
2022年4月に始まったマンション管理計画認定制度を使えば、管理水準を自治体に認定してもらえ、基準を満たす過程そのものが管理改善につながります。
空き家を所有する区分所有者がとるべき対応

空き家を持つ区分所有者には、大きく3つの選択肢があります。
どれが合うかは立地や築年数、活用の意向で変わります。主な違いは次のとおりです。
| 選択肢 | 向いている人 | 主な注意点 |
| 賃貸に出す | 資産を残しつつ収入を得たい | リフォーム費用と空室リスク |
| 売却する | 管理の負担から早く解放されたい | 築古は価格が下がりやすい |
| 空き家管理サービス | 当面は保有し将来判断したい | 毎月の委託費用がかかる |
正解は1つではなく、保有の目的に合わせて選ぶことが大切です。
賃貸として貸し出す
使う予定がなく資産として残したい場合は、賃貸が選択肢になります。家賃収入で管理費や修繕積立金をまかなえる点がメリットです。
入居前のリフォーム費用や空室のリスクは考えておく必要があります。
売却して手放す
管理の負担から早く解放されたい場合は、売却が現実的です。買い手が付けば、以後の管理費や固定資産税の支払いがなくなります。
築古のマンションは価格が下がりやすく、希望どおりの金額で売れない点には注意が必要です。
複数の不動産会社に査定を依頼し、相場を把握してから進めると納得しやすくなります。
空き家管理サービスを使う
すぐに売らず保有を続ける場合は、空き家管理サービスの利用が向いています。定期的な換気や通水、郵便物の確認などを代行してもらえる点が便利です。
費用は業者やプランによって差がありますが、目安は月5,000円から1万5,000円程度です。管理組合と連絡を取りながら使えば、遠方でも劣化を抑えられます。
マンション管理と空き家増加に関するよくある質問
マンションの空き家が増えると管理費は上がりますか?
空き家でも管理費や修繕積立金は払う義務がありますか?
空き家のマンションは売却と賃貸のどちらがよいのでしょうか?
まとめ|今から始めるマンションの空き家対策

マンションの空き家増加は、管理費の滞納や建物の老朽化、所有者不明化を通じて資産価値を下げます。
まずは自分のマンションの滞納状況と長期修繕計画を、管理組合に確認してみましょう。空き家がある場合は、賃貸・売却・空き家管理サービスを早めに比べておくと安心です。
動き出すのが早いほど選べる対策は増え、資産価値を保ちやすくなります。


