マンションの災害対策とは?オーナーが備えるべき対策や注意点を解説

マンションの災害対策とは?オーナーが備えるべき対策や注意点を解説

この記事の要点

  1. 地震・台風・豪雨の発生によって、建物損傷、停電、断水、浸水などの被害が起こる可能性がある
  2. オーナーは災害対策として、平常時に非常用備蓄や設備点検、防災マニュアル整備など行う必要がある
  3. 災害発生時の初動対応や入居者への連絡方法を決め、二次被害を防ぐための注意点を理解しておくことが大切

近年は、地震や台風、豪雨などの自然災害が全国各地で発生しており、マンションにもさまざまな被害が及ぶ可能性があります。

建物の損傷だけでなく、停電や断水、エレベーターの停止など、入居者の生活に大きな影響を与えるケースも少なくありません。

災害による被害を最小限に抑えるためには、発生後の対応だけでなく、平常時から防災対策や備蓄、防災マニュアルの整備などを進めておく必要があります。

この記事では、マンションで想定される災害リスクや、オーナーが備えるべき対策、災害発生時の対応や注意点について解説します。

日頃から災害への備えを進め、入居者が安心して暮らせるマンション運営を目指しましょう。

  • マンションで想定される災害リスクとは?地震による建物やライフラインへの被害- 台風や豪雨による浸水・土砂災害- マンション特有の災害リスク- マンションオーナーが災害に備えて行うべき対策防災マニュアルや防災計画を整備する- 防災備品や備蓄を準備する- 建物や設備を定期的に点検する- 管理会社と災害時の対応を共有する- 災害が発生した際にオーナーが取るべき対応入居者の安全確認と情報共有を行う- 建物や共用設備の被害を確認する- 復旧に向けて管理会社や専門業者と連携する- マンションの災害対策で注意したいポイント防災備品を用意するだけで安心しない- ハザードマップを確認しておく- 防災訓練や情報共有を継続する- マンションの災害対策は平常時からの備えが重要

マンションで想定される災害リスクとは?

マンションは耐震性や耐火性に優れているといわれますが、災害による被害を完全に防げるわけではありません。

ここでは、マンションで想定される主な災害リスクについて解説します。

地震による建物やライフラインへの被害

地震が発生すると、建物本体だけでなく、停電や断水、ガスの供給停止など、ライフラインにも大きな影響が生じる可能性があります。

また、エレベーターが停止すると、高層階に住む入居者の移動が困難になるほか、共用設備の点検や復旧にも時間がかかる場合があります。

建物に大きな損傷がなくても、設備の故障によって日常生活が制限されるケースも少なくありません。

台風や豪雨による浸水・土砂災害

近年は、台風や集中豪雨による浸水被害も増えています。

特に、地下駐車場や電気設備が低い位置に設置されているマンションでは、浸水によって設備が使用できなくなる可能性があります。

マンション特有の災害リスク

マンションでは、戸建て住宅とは異なる災害リスクもあります。

例えば、高層階ではエレベーターが停止すると階段での移動を余儀なくされるほか、断水時には給水設備の停止により生活用水が確保できなくなることがあります。

また、建物の安全性が確認できれば在宅避難が推奨されるケースもありますが、そのためには備蓄や防災設備の整備が欠かせません。

マンションオーナーが災害に備えて行うべき対策

災害が発生してから対応を始めても、被害を最小限に抑えることは容易ではありません。

平常時から防災対策を進めておくことで、入居者の安全確保だけでなく、建物や設備への被害を軽減しできます。

ここでは、マンションオーナーが災害に備えて行いたい対策を紹介します。

防災マニュアルや防災計画を整備する

災害時に迅速な対応を行うためには、防災マニュアルや防災計画を整備しておくことが重要です。

災害発生時の連絡体制や避難方法、管理会社との役割分担などをあらかじめ決めておくことで、混乱を防げます。

また、緊急連絡先や避難場所を入居者へ周知しておくことも大切です。

定期的に内容を見直し、実際の運用に合わせて更新しましょう。

防災備品や備蓄を準備する

災害時は、停電や断水により日常生活が大きく制限される可能性があります。

そのため、非常用トイレや懐中電灯、飲料水、保存食などの防災備品を備えておくことが重要です。

また、防災備品は準備するだけでなく、使用期限や数量を定期的に確認し、必要に応じて補充・交換しましょう。

入居者自身にも家庭での備蓄を呼びかけることで、マンション全体の防災力向上につながります。

【完全版】マンション管理の防災対策|備えるべき備蓄品リスト

建物や設備を定期的に点検する

災害による被害を軽減するためには、建物や設備の定期点検も欠かせません。

排水設備や非常用設備、共用部の状態を確認し、不具合があれば早めに修繕を行います。

また、浸水リスクがあるマンションでは、止水板や排水設備も小まめに点検しましょう。

管理会社と災害時の対応を共有する

管理会社へ管理業務を委託している場合は、災害時の対応について事前に共有しておくことも重要です。

災害発生時の連絡体制や被害確認の手順、応急対応の役割分担を明確にしておけば、迅速な対応につながります。

オーナーと管理会社が連携しながら備えを進めることで、災害時の混乱を最小限に抑えられるでしょう。

災害が発生した際にオーナーが取るべき対応

災害が発生した際は、慌てて復旧作業を進めるのではなく、まずは入居者の安全を確保することが最優先です。

その後、建物や設備の被害状況を確認し、管理会社や専門業者と連携しながら対応を進めることで、二次被害の防止につながります。

あらかじめ対応手順を決めておくことで、災害時の混乱を抑えやすくなるでしょう。

入居者の安全確認と情報共有を行う

災害発生後は、入居者の安否や建物内の状況を速やかに確認しましょう。

また、停電や断水、エレベーターの停止など、生活に影響する情報を管理会社と連携しながら入居者へ周知することも重要です。

避難が必要な場合は、自治体からの避難情報や避難場所を案内し、安全確保を優先してください。

建物や共用設備の被害を確認する

入居者の安全を確認した後は、建物や共用設備の被害状況を確認します。

エントランスや共用廊下、給排水設備、エレベーターなどに異常がないか点検し、危険な箇所があれば立ち入りを制限しましょう。

また、建物の損傷や浸水などを写真で記録しておくと、保険の申請や修繕時の資料として活用できます。

被害状況を正確に把握することが、復旧を円滑に進める第一歩です。

復旧に向けて管理会社や専門業者と連携する

被害状況を確認したら、管理会社や設備業者、修繕会社などと連携しながら復旧作業を進めます。

必要に応じて保険会社へ連絡し、補償内容や手続きについて確認することも大切です。

また、復旧の進捗状況や設備の使用可否などを入居者へ継続的に共有することで、不要な混乱や問い合わせを減らせます。

災害後は迅速な復旧だけでなく、入居者へ安心感を与える情報発信も、オーナーの重要な役割です。

マンションの災害対策で注意したいポイント

防災対策は、一度実施すれば終わりではありません。

備蓄品や設備は定期的な点検が必要であり、災害リスクも周辺環境や気候の変化によって変わることがあります。

入居者が安心して暮らせるマンションを維持するためにも、継続的に防災体制を見直しましょう。

防災備品を用意するだけで安心しない

防災備品は準備するだけでは十分とはいえません。

非常食や飲料水には賞味期限があり、簡易トイレや電池なども定期的な交換が必要です。

また、防災倉庫の備蓄量が現在の入居者数に見合っているかも確認しましょう。

定期的に点検や補充を行い、災害時にすぐ使用できる状態を維持することが大切です。

ハザードマップを確認しておく

マンション周辺の災害リスクを把握するために、自治体が公表しているハザードマップを確認しておきましょう。

浸水想定区域や土砂災害警戒区域などを事前に把握しておくことで、必要な備えや避難方法を検討しやすくなります。

また、新たな開発や災害想定の見直しにより、ハザードマップが更新されることもあります。

定期的に最新情報を確認し、必要に応じて防災計画を見直しましょう。

防災訓練や情報共有を継続する

防災マニュアルを整備していても、実際の行動が分からなければ十分な効果は期待できません。

管理会社と連携しながら防災訓練を実施したり、防災マニュアルや避難経路を入居者へ周知したりすることが大切です。

また、災害時の連絡方法や緊急連絡先を定期的に確認しておくことで、万が一の際も迅速に対応しやすくなります。

日頃から情報共有を行い、マンション全体で防災意識を高めていきましょう。

マンション管理の防災ガイド|命と資産価値を守る実効性の高い備え

災害対策にかかる費用の目安

災害対策は「何から手をつけるか」で迷いやすい分野です。費用感を先につかんでおくと、修繕積立金や経費のなかでどこまで実施できるかを判断しやすくなります。

以下は一般的な目安であり、建物規模・地域・仕様によって金額は上下します。実際の導入時は複数社から見積もりを取って比較してください。

対策項目費用の目安実施サイクルの目安
防災備蓄品(水・食料・簡易トイレ等)1戸あたり3,000〜10,000円3〜5年ごとに入替
防災倉庫・備蓄庫の設置30万〜100万円程度初回のみ
エレベーター地震時管制運転装置の追加1基あたり50万〜150万円程度初回のみ
止水板・土のうの常備10万〜50万円程度初回+点検
防災マニュアル作成(専門会社委託)10万〜50万円程度3年ごとに見直し
防災訓練の実施(消防設備業者立会)3万〜15万円程度年1〜2回

なお、消防法に基づく消防用設備等の点検は、機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回と定められています。非特定防火対象物である共同住宅では、報告は3年に1回が原則です。この法定点検は災害対策の有無にかかわらず必須のため、まずここが履行されているかを確認するところから始めるのが確実です。

季節ごとの備えスケジュール

災害対策は年間を通して均等に行うものではなく、リスクの高まる時期の手前で動くのが実務的です。特に台風シーズンの資材手配は、直前になると業者の対応が集中して間に合わないことがあります。

  • 3〜4月:新年度の入居者へ避難経路と緊急連絡先を配布。備蓄品の賞味期限を棚卸しする
  • 5〜6月:梅雨入り前に排水溝・ドレン・側溝の清掃を実施。止水板や土のうの数量を確認する
  • 7〜8月:台風本格化の前に屋上・バルコニーの飛散物を撤去。外壁や看板の固定状況を点検する
  • 9〜10月:台風通過後の被害確認と保険請求の可否を判断。修理業者の手配は早いほど順番が回ってくる
  • 11〜12月:受水槽・給水ポンプ・自家発電設備の点検。積雪地域では融雪剤やスコップを配備する
  • 1〜2月:防災訓練の実施と防災マニュアルの見直し。連絡網の電話番号が最新かを確認する

見落とされやすいのが、管理会社の緊急連絡先が「平日日中のみ」になっているケースです。夜間・休日に災害が起きたときに誰が一次対応するのかを、契約書のレベルで確認しておくと初動が変わります。

オーナーが負う法的責任の範囲

災害による被害でも、建物の設置または保存に瑕疵(かし)があった場合には、オーナーが責任を問われる可能性があります。根拠となるのが民法717条の工作物責任です。

この規定では、建物などの工作物の瑕疵によって他人に損害が生じたとき、まず占有者が責任を負い、占有者が必要な注意をしていた場合には所有者が責任を負うとされています。所有者の責任は無過失責任と解されており、「知らなかった」という主張だけでは免れにくい点が特徴です。

一方で、通常の想定を大きく超える規模の自然災害であれば、不可抗力として責任が否定される場合もあります。ただし、外壁のひび割れや手すりの腐食など、事前の点検で把握できた劣化が原因であれば、災害を理由とした免責は認められにくいと判断される可能性があります。

点検記録を残しておくことが実務上の防御になります。個別のケースで責任の有無が争われる場合は、弁護士や保険会社の担当者に確認してください。

よくある質問

災害で入居者が被害を受けた場合、オーナーは賠償責任を負いますか?

建物の設置・保存に瑕疵があり、それが原因で損害が生じた場合は、民法717条の工作物責任により所有者が賠償責任を負う可能性があります。例えば、老朽化した外壁タイルが台風で剥落し通行人に当たったようなケースです。一方、耐震基準を満たした建物が想定を超える大地震で損傷した場合は、不可抗力として責任が否定されることもあります。判断を分けるのは日頃の点検と是正の記録のため、定期点検の報告書は保管しておくのが安全です。個別の事案については弁護士に確認してください。

火災保険だけで水災や地震の被害はカバーできますか?

できません。一般的に火災保険の基本補償に水災は含まれておらず、水災補償を特約として付帯しているかどうかで扱いが変わります。地震・噴火・津波による損害は火災保険では対象外で、地震保険を別途契約する必要があります。地震保険の保険金額は火災保険の30〜50%の範囲内で設定するのが原則で、建物5,000万円・家財1,000万円が上限です。ハザードマップで浸水想定区域に入っている物件は、水災補償の有無を証券で確認しておくことをおすすめします。

災害で建物が使えなくなった場合、家賃はどうなりますか?

2020年4月施行の改正民法611条により、賃借物の一部が滅失などで使用できなくなった場合、賃料はその割合に応じて当然に減額されると定められています。以前は借主からの請求が必要でしたが、現在は請求がなくても減額が生じます。建物全部が滅失して使用不能になった場合は、賃貸借契約自体が終了します。復旧までの期間や減額割合をめぐって争いになりやすいため、被害状況の写真と復旧工事の記録を残しておくと交渉がスムーズです。

備蓄品はどのくらいの量を用意すればよいですか?

国や自治体の指針では、家庭内備蓄として最低3日分、可能であれば7日分が推奨されています。水は1人1日3リットルが目安のため、3日分なら1人9リットルです。ただしマンションの共用備蓄で全戸分をまかなうのは現実的ではないため、各住戸での備蓄を促しつつ、共用部には簡易トイレ・発電機・投光器・救助工具など個人では持ちにくいものを置く配分が実務的です。特に断水時の排水は問題になりやすいため、簡易トイレは戸数×3日×5回程度を目安に検討してください。

エレベーターの地震時管制運転装置は義務ですか?

2009年9月施行の建築基準法関連告示により、それ以降に設置される新設エレベーターには地震時管制運転装置の設置が義務付けられました。既存のエレベーターには遡及適用されないため、それ以前に設置された機器には付いていないことがあります。装置がない場合、地震時に最寄り階へ自動停止せず閉じ込めが発生するリスクが高まります。後付けは1基あたり50万〜150万円程度が目安で、リニューアル工事とあわせて実施すると効率的です。まずは管理会社を通じて保守業者に搭載の有無を確認してください。

マンションの災害対策は平常時からの備えが重要

マンションでは、地震や台風、豪雨などの自然災害によって、建物や設備だけでなく、入居者の生活にも大きな影響が及ぶ可能性があります。

そのため、災害が発生してから対応するのではなく、防災マニュアルの整備や備蓄品の準備、設備点検など、平常時から防災対策を進めておきましょう。

災害への備えは、入居者の安全を守るだけでなく、マンションの資産価値や信頼性を維持するためにも欠かせません。

日頃から管理会社や入居者と連携しながら防災対策を進め、安心して暮らせるマンション運営を目指しましょう。

災害時にも慌てない!オーナー必須の緊急対応マニュアル

著者

クラウド管理編集部

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