マンション管理のアスベスト調査|管理組合の役割と費用・補助金

マンション管理のアスベスト調査|管理組合の役割と費用・補助金

この記事の要点

  1. 大規模修繕など改修工事の前には、規模の大小にかかわらずアスベストの事前調査が法律で求められる
  2. 調査と報告は工事を請けた元請業者の義務だが、管理組合は発注者として図面を渡し、調査費を負担する立場にある
  3. 吹付け材の含有調査には国の補助制度があり、1棟25万円を限度に自治体経由で費用の補助を受けられる

「大規模修繕の見積もりに、アスベスト調査の費用が入っているけど必要なの?」

「理事になったばかりで、調査を誰に頼んで何を決めればいいのかわからない…」

築年数がたったマンションでは、修繕工事の打ち合わせで初めてアスベスト調査を知る理事も少なくありません。物件によっては調査費が高額になり、金額の大きさに戸惑う方もいるでしょう。

費用の根拠や管理組合の役割が見えないままでは、総会で住民に説明できません。

アスベスト調査は、工事前に建材の安全を確かめる手続きとして法律で定められています。管理組合が担う役割と費用の流れを知っておけば、見積もりが妥当かどうかも見極めやすくなるでしょう。

本記事では、調査が必要になる条件と責任の分け方に加え、費用と補助金も紹介します。

工事会社の説明だけに頼らず、住民に納得してもらえる形で調査を進められるでしょう。

マンション管理でアスベスト調査が必要になる場面とは

アスベスト調査が必要になるところを調査している様子の写真

マンションでアスベスト調査が必要になるのは、古い建物で修繕や改修の工事を行うときです。

アスベストとは、石綿とも呼ばれる繊維状の鉱物で、吸い込むと肺の病気を起こすおそれがある建材の原料を指します。

2006年より前の建物は含有建材の可能性がある

アスベストを0.1%を超えて含む建材は、2006年9月1日から製造と使用が全面的に禁止されました。この日より前に着工したマンションは、含有建材が使われている可能性があります。

設計図書や過去の調査記録は、事前調査の際に元請業者へ渡す資料です。築年数のたった物件では、含有の可能性を前提に保管場所を確認しておきましょう。

大規模修繕や改修工事の前に調べる

大気汚染防止法と石綿障害予防規則では、解体や改修の前に建材のアスベスト含有を調べる事前調査が定められています。対象は、工事で触れる部分のすべての材料です。

マンションでは、大規模修繕が代表的な場面でしょう。調査は工事の規模の大小を問わないため、小さな補修でも工事会社に確認しておくと安心です。

アスベスト事前調査は誰が行う?

アスベストの事前調査をしている工事業者の写真

アスベストの事前調査と結果の報告は、工事を請けた元請業者が行う義務です。

事前調査とは、工事で触れる建材にアスベストが含まれているかを、書類と現地で確かめる手続きを指します。

調査は有資格者が担当する

2023年10月1日以降に着工する工事では、建築物の事前調査は有資格者の担当となりました。建築物石綿含有建材調査者の講習を修了した人などが対象です。

見積もりの段階で、調査する人の資格を確認しておきましょう。要件を満たさない人の調査では、事前調査の義務を果たしたことになりません。

一定規模の工事は結果を国に報告する

2022年4月からは、一定規模以上の工事で事前調査の結果を電子システムで報告する義務が始まりました。厚生労働省によると、対象は次の工事です。

  • 解体工事:解体部分の延べ床面積が80㎡以上
  • 改修工事:請負金額が100万円以上

マンションの大規模修繕は、多くの場合で改修工事の基準に当てはまります。

参照:厚生労働省石綿総合情報ポータルサイト「改修・リフォーム業者のみなさまへ」

管理組合は発注者として協力する

管理組合は工事の発注者として、元請業者の事前調査に協力する立場です。設計図書や過去の調査記録を持っていれば、元請業者に渡す必要があります。

調査費用を適正に負担するのも、発注者の役割です。調査が終わると元請業者から結果の説明を受け、報告書を受け取って保管する流れでしょう。

共用部と専有部で調査の責任はどう違う?

マンションの共用部と専用部の両方が写っている写真

共用部の調査は管理組合が、専有部の調査は各区分所有者が依頼します。

共用部とは、廊下や外壁、屋上など住民全体で使う部分のことです。専有部は、各住戸の内側を指します。

共用部は管理組合が依頼する

外壁や共用廊下、屋上の防水層は共用部にあたるため、調査の依頼主は管理組合です。調査費は管理組合の予算から出し、総会や理事会の承認を得て進めます。

共用部の調査報告書は、写しを理事会で保管しておきましょう。次の修繕で同じ箇所を調べるとき、過去の記録として役立ちます。

専有部は区分所有者が依頼する

住戸内のリフォームでは、工事を頼む区分所有者が発注者になります。天井や床の張り替えで既存の建材を壊す場合も、事前調査が必要です。

管理組合は、専有部リフォームの届出を受ける段階で調査の有無を確認できます。届出書に調査の欄を設けておくと、住民同士のトラブルを防げるでしょう。

アスベスト調査の流れと結果の読み方

アスベストの細かい調査をしている様子の写真

アスベスト調査は、書面調査から分析まで段階を踏んで進みます。

含有とは、建材の中にアスベストが混ぜ込まれている状態のことです。見た目では判別できない建材も少なくありません。

書面調査・目視・分析の3段階で進む

調査会社が建材を確かめる順番は、次のとおりです。

  • 書面調査:設計図書や過去の記録から使用建材を調べる
  • 目視調査:現地で建材の種類や劣化の状態を確かめる
  • 分析調査:判別できない建材を採取して含有の有無を分析する

分析をせずに含有ありとみなす「みなし判定」もあります。費用は抑えられる反面、工事費が上がる場合がある点に注意しましょう。

レベル1〜3で必要な対策が変わる

見つかった建材は、粉じんの飛びやすさによって3つのレベルに分けられます。違いを次の表にまとめました。

レベル主な建材飛散のしやすさ
レベル1吹付けアスベスト著しく高い
レベル2保温材・耐火被覆材高い
レベル3外壁塗材・床材などの成形板比較的低い

マンションの大規模修繕では、外壁の塗材や下地調整材からレベル3が見つかる場合があります。

見つかってもすぐ除去するとは限らない

マンションみらい価値研究所の調査では、2006年より前の物件のうち17.24%で含有建材が見つかりました。含有ありの物件のうち、措置済みか措置予定がある物件は1.41%です。

成形板のように固定された建材は、壊さなければ飛び散りにくいとされています。対策は、劣化の状態と次の工事時期から専門業者と決めましょう。

参照:マンションみらい価値研究所「マンションにおけるアスベスト調査の実態」

アスベスト調査の費用と補助金

アスベスト調査と補助金の説明を受けている様子の写真

共用部の調査は管理組合の予算で行い、吹付け材なら国の補助制度も使えます。

補助金とは、国や自治体が対策費用の一部を負担する制度のことです。

調査費用は総会で承認を得る

管理組合は、共用部の調査費用を修繕工事費と一緒に総会の議案に入れて話し合います。調査費と工事費を分けて示すと、住民も金額の根拠を理解しやすいでしょう。

調査費は、分析する検体の数が増えるほど上がります。複数の会社から見積もりを取り、検体数と単価を比べてみましょう。

吹付け材の調査には補助金がある

国土交通省のアスベスト対策事業では、吹付け材の含有調査が補助の対象です。限度額は原則1棟あたり25万円で、民間の建物は自治体を通じて申請します。

制度がない自治体もあり、交付決定前に契約すると対象外となる点に注意が必要です。調査会社を決める前に、市区町村の窓口へ問い合わせておきましょう。

参照:国土交通省「アスベスト対策Q&A」

よくある質問

アスベスト調査の記録はどのくらい保存されますか?

事前調査の結果の記録は、元請業者が作成して3年間保存する決まりです。記録は作業場所にも備え付けられ、概要が見やすい場所に掲示されます。3年を過ぎると、工事会社に記録が残っていない場合もある点に注意が必要です。次の修繕で使えるよう、管理組合でも報告書を受け取って保管しておきましょう。

アスベスト調査の結果は中古マンションの売買で説明されますか?

宅地建物取引業法では、アスベスト使用の有無の調査結果が記録されているとき、重要事項説明で内容を伝える決まりです。管理組合が調査報告書を保管していれば、売買の際に仲介会社が内容を説明できます。報告書は理事会で引き継いでおきましょう。

小規模な修繕でもアスベスト調査は必要ですか?

小規模な修繕でも、改修工事であれば事前調査は必要です。厚生労働省は、解体・改修工事の規模の大小にかかわらず調査を求めています。請負金額が100万円以上の改修工事なら、元請業者が結果を電子システムで報告する義務の対象です。見積もりに調査費が入っているかを確認してから契約しましょう。

まとめ|修繕の前にアスベスト調査の準備を始めましょう

アスベスト調査のまとめの写真

修繕や改修の前には、工事の規模にかかわらずアスベスト調査が必要です。調査は元請業者が行い、管理組合は発注者として図面を渡し費用を負担します。

次の修繕計画が決まったら、まず設計図書と過去の調査記録の保管場所を確認してみましょう。補助制度の有無も、自治体の窓口で調べておくと安心です。

準備を早めに進めれば、工事の遅れや予定外の出費を防ぎ、住民の理解も得やすくなるでしょう。

著者

クラウド管理編集部

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